むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Mora Prokaza / By Chance

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Mora Prokaza / By Chance


ベラルーシブラックメタル/トラップバンドによる3作目フルレングス。


ブラックメタルとヒップホップのサブジャンルであるトラップを組み合わせる異形とも言える作風です。
元々はオーソドックスなブラックメタルをやっていた彼らに何があったのかはわからないですが、極めて大胆な変化を遂げました。
ブラックメタル由来の厭世的で地下室で儀式をしているような邪悪で冷たい音世界に、トラップのビートと噛み付くグリムVoによるラップとも言えるような吐き捨てが乗っかる個性的な音楽性で、M-4“I'm A Human”で見せるように、時折トレモロギターやブラストビートが吹き荒れます。
そもそも幕開けを飾るM-1“WIMG”からして妖しいメロディー使いとぎゃあぎゃあと喚き散らすVoが隙間のあるリズム感に素知らぬ風体で馴染むという離れ業をやってのけています。
哀愁あるギターと管楽器が絡みつきVoがやかましく捲し立てるトラップM-2“I'm Not Yours”、猟奇的なサーカスというような雰囲気を漂わせて隙間のある音作りで迫ってくるM-3“Check It”、倦怠感を滲ませたグルーヴがゆったり渦巻き美しく絶望的なピアノソナタへ落とし込まれるM-5“I See It This Way”、くっきりソリッドに撃ち込まれるスネアの抜けに反して極めて怪しく胡散臭い風体で喚き散らすM-6“Madonna”、寂しげなギターの絶対零度のメロディーが徐々にほどかれていくM-7“Be Three”、一転してばたついた図太いビートと汚ならしい吐き捨てがどんどんテンション高く畳み掛けてくるM-8“Sorry Man”、ざらついたマーチングドラムの硬質なビートを悲痛な絶叫による呪文が掻き消していく壮絶なM-9“Blacker Than Black”と、超個性的な音世界に唖然としたまま幕を降ろします。
まだまだこなれていない部分も散見されますが、新しいものを生み出すことへのテンションが高く、面白さに満ちていますね。
トレモロとトラップビートの相性の良さが意外とあるように印象づけられるのは、彼等のまとめ上げる手腕によるものだと思います。
今作を始点としてこの音楽性が発展していくかはわかりませんが、恐れを知らぬこの不敵さは是が非でも讃えたいところ。



1. WIMG
2. I'm Not Yours
3. Check It
4. I'm A Human
5. I See It This Way ★
6. Madonna
7. Be Three
8. Sorry Man
9. Blacker Than Black
(2020/Season of Mist Underground)
Time/31:44