むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

【インタビュー】Witch Club Satan


ノルウェーで強い関心を集める新進気鋭のバンドWitch Club Satanにメールインタビューを敢行しました。
思想面の確固たる主張、刺激的なライヴパフォーマンス、ブラックメタルに様々なジャンルを組み込んだスタイルはこれから必ずやさらに注目を集めることでしょう。
では、お楽しみください。




インタビューを受けていただき、ありがとうございます。

Q.デビューアルバム『Witch Club Satan』、素晴らしいアルバムですね。ブラックメタルらしい邪悪さと、ミステリアスな雰囲気があって。周りのリアクションはいかがでしょうか?

A.
ありがとうございます!
私たちのデビューは、一般大衆からもノルウェーのメディアからも、圧倒的な好評を得ています。
多くの批評家が、私たちのアルバムは独自の次元のものだと主張しています。「 古典的なノルウェーブラックメタルの響きを保ちながら、新鮮で反逆的な精神を吹き込んでいる」というような。

主なハイライトは、世界最大のメタル雑誌のひとつであるBlackhammer UKで、10つ星のうち8つを獲得したことですね: 「Witch Club Satanは、単にブラックメタルの分野に参入したのではなく、革新と大胆さの旗を掲げて、その分野に殴り込みをかけたのだ」。

また、メタル・コミュニティ全体から完全に受け入れられていない、まだ少し外側にいる存在であることもあって、これまであまりメタルを聴いてこなかったような多くの「ヴァージン・リスナー」にも接触することができました。



Q.本作はクレジットがわからないですが、セルフプロデュースですか?ミックス、マスタリング、ゲストなど明かせる範囲で教えてください。

A.
私たちはレーベルを通さずに初のアルバムをリリースしました。レコード・レーベルに縛られずにファースト・アルバムを作ることは、私たちにとってとても重要だったのです。
すべてを自分たちで定義しました。とはいえ、私たちには1人だけでなく3人のプロデューサーがいます。本作は、メタルシーンのレジェンドであるAnders Odden(*1)のスタジオでレコーディングし、スケールの反対側に属するVetle Junker(*2)と一緒にしました。
ポップ・ミュージシャン、プロデューサーとしての耳とセンスを持つJunkerと、ボードーのブラックメタル・シーンで長年活躍し、特にブラックメタルへの嗅覚に優れたレギュラー・サウンド・エンジニアのSindre Nicolaisen(*3)を組み合わせるのは、エキサイティングな組み合わせでしたね。


Q.アルバムで苦労したことを教えてください。また、うまくいったと確信できたことも。

A.
最大の挑戦は、プロジェクト全体を最もよく捉えた首尾一貫したアルバムを作ることでした;Witch Club Satanは、音楽であると同時に儀式や演劇でもあるんです。私たちにとって、音楽には魔法のような能力と力があり、私たちは音を使って変革のメッセージを送る魔女なのです。
ライヴで曲を演奏する時は、曲の背景をもう少し説明するようなストーリーを披露することが多いですね。
たとえば、「Mother Sea」では、数世紀前に魔女として烙印を押され、火刑に処された歴史的な魔女たちの物語(*4)が前面に出てきます。彼女たちはこのプロジェクトの大きな一部であり、私たちは彼女たちの物語を伝える義務があると感じています。
とてつもない轟音を出すことと同じくらい重要なのは、ある種の親密さをとらえることでした。私たちはいいバランスを見つけたと思っていますよ。



Q.アルバムで好きな曲、思い入れのある曲を教えてください。

リリースに先立ち、各自が自分にとって大切な曲について個人的な投稿をしているので、それを確認してください。

https://www.instagram.com/witchclubsatan/




Q.あなたたちは「フェミニストブラックメタル」を名乗っています。このセンセーショナルなタグはどのような背景がありますか?

A.
私たちにとって、フェミニズムは本質的にグローバルなプロジェクトです。平等とヒューマニズムの問題ですね。
このジャンル(ブラックメタル)で女性の割合が極端に少ないのは事実で、だからこそ、フェミニストのプロジェクトとして声明を出し、自分たちの立場を確立することが重要なのです。長い目で見て、性別にこだわる必要がないようにしたいんです。
女性らしさや男性らしさといった性別はそれほど重要ではなく、すべての人はそれらの混合体であるということです。
今後、私たちを占める発言やテーマは他にもあるでしょう。重要なのは、性別に関係なく、十分に伝えられていないストーリーがあるということ、そして、発言の時間がずっと少ないグループがあるということです。私たちが語りたいのは、これらの物語なのです。
女性であること、そしてフェミニストのバンドを作ることは、その一歩ですが、重要なことだと考えています。ブラックメタルに対するフェミニスト的なアプローチも、私たちにまったく違ったことを書く機会を与えてくれますよ。



Q.バンドのヒストリーをお聞きしたいです。どういった経緯でバンドを結成したのでしょう?

A.
実は私たちは7年前、別の音楽プロジェクトで知り合ったんです。
Witch Club Satanと同じような、演劇と音楽をミックスした一種のパンク・プロジェクトとして始まったんですね。実はメタルに行き着く前に、インディー・テクノ・ラップをやろうと考えていたんですよ!(笑)
でもすぐに、ブラックメタルこそが自分たちがいるべき場所だと気づいたんです。この頃、私たちは本当に現状にうんざりしていました。怠け者で、疲れていて、ほとんど無気力だと感じていました。私たちがただ微睡んでいる間に、私たちの周りでは、世界は本格的な危機へと向かっていました。 目を覚ます時が来たと感じたんです。とてつもない轟音を出したかったんですよ。
ブラックメタルには怒りと反抗があります。それはメタルのパンクであり、テクニックよりもエネルギーを重視しますから。


Q.Witch Club Satanという名前は背徳的で覚えやすいです。由来を教えてください。

A.
魔女は重要な導きの星であり、私たちの他の価値観や側面を鼓舞し、引き出してくれます。
Witch Club Satanはブラックメタル・バンドであり、コミュニティを目指しています。
私たちは観客を魔女の輪、私たちのクラブに招待したいのです。



Q.はじめて聴いたブラックメタルを覚えていますか?

A.
ブラックメタルは、特にNikoline(Spjelkavik/ギター)とVictoria (F. S. Røising/ベース)の人生において、音楽が彼女たちのアイデンティティを定義し、表現する重要な手段であった時代と密接に結びついていますね。ティーンエイジャーの頃、さまざまな種類の過激な音楽を聴くことは、あらゆる感情に対処し、内省し、不正義に対して声を上げ、反抗する勇気を見出す方法でした。

一方、Johanna (Holt Kleive/ドラム、ヴォーカル)はジャズ一家の出身で、幼少期はほとんどメタルを聴かなかったですね。でも彼女は、ブラックメタルが本当に自分と関係があること、そしてこのジャンルがほとんど無限の、どこか禁じられたものを表現することを可能にしてくれることを、早い段階で発見しました。



youtu.be

Q.日本ではまだライヴは観られませんが、YouTubeではとても作り込んだステージセットが観られますよね。演劇のようなパートも興味深かったです。このアイデアはどういったところから生まれているのでしょう?ビジュアルイメージも強烈でインパクトがありますね。

A.
Witch Club Satanは演劇の中で考案され、大した音楽経験もなく生まれました。私たちは演劇(VictoriaとNikoline)、そして作曲(Johanna)のバックグラウンドを持つ傍観者から入ってきて、バンドはまず演劇を通じて知られるようになったんです。
これが、私たちがちょっと怖いと思われ、いくつかのアリーナから排除されてきた理由でもあるのでしょうね。私たちは、メタルというジャンルのシアトリカルな表現や演出をとても大切にしていますから。
私たちは、他の多くの人たちよりもこのジャンルで(演劇的な)演出を展開し、衣装についてもできる限りのことをしていますし、メイクや舞台美術の要素を取り入れ、パンクと怒りを育てようとしています。




Q.直接的に参考にしたバンドやミュージシャンはいますか?あなたたちの音楽には、DarkthroneやGorgorothを感じます。それと同じくらい、Myrkur、Sylvaine、Chelsea Wolfe、あるいはKælan Miklaも感じます。

A.
素晴らしい比較ですね!上記のうち何人かは、私たちが間違いなく尊敬し、影響を受けている人たちです。加えて、Mayhemについても触れておかなければなりません。Jørn Stubberud(Necrobutcher)は、結成した初日から私たちのメンターですし、Witch Club Satanの音楽的、芸術的な発展にとって大きな意味を持っていますよ。



Q.日本ではまだ知られてるわけではないですが、これから注目されていくと確信しています。メッセージをお願いします。

A.
そうなるといいですね!日本で演奏するのが夢なんです。


(*1):Cadaverのギタリスト
(*2):Auroraでの仕事でも知られるジャズ/フュージョンのミュージシャン/プロデューサー
(*3):Monumentumのドラマーでプロデューサー
(*4):魔女狩りのこと



Witch Club Satan:
ノルウェーで2021年頃結成、活動する3人組。
フェミニストブラックメタル」を標榜し、朗読を駆使したり視覚に訴えかけるシアトリカルなライヴパフォーマンスで話題を集める。元々はパンクと演劇を組み合わせたりヒップホップのようなものをやろうとしていたという。そのため、彼女たちの音楽スタイルも、ブラックメタルの王道のみならずトリップホップアンビエントなど、アブストラクトなものも取り入れている。
2024年、初のフルレングスである『Witch Club Satan』を自主制作でリリース。ノルウェー国内だけでなく、世界中から注目を集めはじめている。
ラインナップは、
Victoria F. S. Røising(ベース)、Nikoline Spjelkavik(ギター)、Johanna Holt Kleive(ドラム/ヴォーカル)
witchclubsatan - Listen on YouTube, Spotify - Linktree



youtu.be