むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Bhleg / Fäghring


Bhleg / Fäghring



スウェーデンブラックメタルによる4作目フルレングス。



解散したブラックメタルLjusetのメンバーが新たにはじめたバンドです。
前作までは荒々しいプロダクションと粗暴さが前面に出ていたスタイルですが、本作ではそれらの要素に加え、土着的なメロディーやコーラスを配置したアトモスフェリックなペイガンブラックに近い路線にシフトしています。
これは、森の妖精や魔物をイメージしたようなカバーアートでも象徴的ですね。
曲のタイトルも、「緑豊かな夜明け」やら「肥沃な土壌」といった神話的な意味合いを持つものが多く、シンボリックなデザインのRawブラック然とした前作以前にもリンクしつつ、発展させています。
従来よりもRawさが減退していますが、より生々しいプロダクションになっており、陰鬱な質感が増しているのがポイントですね。ブラックメタルらしいグリムVoだけでなく、朗々としたクリーンで歌い上げるパートも多く、この辺りがペイガンやヴァイキングに近い印象を与えています。
トレモロによるブラックメタルらしい冷たい音像だけでなく、効果的に配置されたアコースティックパートの厳かな鳴りで、「霧煙る森の深奥」みたいな世界観が構築されています。これが美しい。
そして何より、鬱々としたトレモロを据えたインストM-1“Vårdträdet”から一貫し、鳥の鳴き声や森の木々をそよがせる風の音をSEとして配置することで、自然崇拝や自然への畏怖といったコンセプトを強く感じさせます。
クリーンVoで勇壮に歌い上げる序盤から徐々にディストーションが目立ってくる中盤にかけて緩急を使い分けた長尺M-2“Grönskande gryning”、適度な疾走感を叩くドラムや明確なスローパートを盛り込んだ感情を逆撫でするようなギターが耳に障るM-3“Alyr i blom”、若干四つ打ちのようなリズムも取り入れている心地好い疾走で魅せてくれるM-4“Befruktad jord”と、大作志向ですが、コントラストの妙で退屈とは無縁ですね。
小気味好い舞踊で踊り子が歌うような女性コーラスが美しい幕間M-5“Solvigd”、威圧的なグリムVoや絶叫に邪悪なリフが乗る90年代北欧ブラックの威容を再現したような寒々しいメロディーも聴けるM-6“Frö”、小鳥の囀りや祈りのような男女混声のコーラスに不可思議なリズムを忍ばせる打楽器で妖しく幕を引くアウトロ「夏を祝う」を意味する穏やかなM-7“Fagna sumrí”に至るまで、世界観を余すことなく堪能できる逸品です。
派手さがあるわけではなく、暴虐性に特化した作風でもないですが、陰影に富んだ音像や神秘性を好む方には得難いアルバムに仕上がっています。
派手さがないとは言っても、勇壮な威容を感じるネイチャーブラックとしても非常に素晴らしい叙情的なメロディーの宝庫です。
邪悪さを忘れないブラックメタルとしての表情も尚色濃く、プログレッシヴロックの豊潤さも盛り込んだ充実作です。
まさかここまで化けるとは思ってもいませんでした。
深い森の中、時に闇夜を疾駆する何かを想起する魔術的な一枚です。
ちなみにバンド名のBhlegは「輝く」という意味だそうですよ。



1. Vårdträdet
2. Grönskande gryning
3. Alyr i blom ★
4. Befruktad jord
5. Solvigd
6. Frö
7. Fagna sumrí
(2022/Nordvis Produktion)
Time/54:19


Score:9.2/10


www.youtube.com