hellix / Montage
とんでもない作品が出てきました。
元々は3人体制だったようですが、現在はベース/ヴォーカル金子直樹氏による独りバンドのようで、サポートメンバーが参加している形です。本作の参加メンバーは中村壮門(ギター)、石橋幸弥(ハーシュヴォーカル)、関本真之(ギター)、稲村知紀(ピアノ)。かつては、Her Name In Bloodの元メンバーも参加していたこともあるようですね。
本作を例えるなら、Death、Vektorの因子を受け継いだインテレクチュアルなデスラッシュを、Voivodのように気が触れてしまいそうな複雑怪奇な展開で叩きつけてくるもの。
つまり、長尺でありながらとてつもないスピードで聴く者を振り落としにかかる、ぐうの音も出ないほどの完璧なスラッシュメタルだということ。また、初期デスメタルのように、粗さを残した吐き捨てるヴォーカルの影響もあって、デスラッシュのごとき爽快感もきっちりあります。聴いていてとても気持ち良いんですね。
焦燥感をひたすら煽り続けるため、偏執的とも言える完成度と相俟って凄まじいカオスを産んでいます。
これは、実質的にオープニングを飾るM-2「Dada Construction」からわかるでしょう。SICKな雰囲気すら漂わせる"汚し"が映えるプロダクションで、吐き捨てる治安の悪いがなり声、1小節にどれだけ詰め込んでるの?と聞きたくなるくらいのキレ味抜群のリフ、忙しなくパターンを変え続けるドラムと言い、ライヴ再現をガン無視したかのような楽曲構成。
この曲もそうですが、1曲平均7分はあるのですが、退屈さとは無縁の展開の多さが素晴らしいです。
フレットレスベースのようにうねるベースをフックに使い、ザクザクと耳を刻むディストーションが心地良すぎるタイトルと裏腹に凶悪極まりないM-3「Cofee Break」。
ハードコアテイストも楽しく、甲高いギターのタッチも耳に優しくない超高速の刻みが襲い掛かるクロスオーバースラッシュの風合いも感じるM-4「Stuttering/Exquisite」。
トイピアノのような音色で退廃的な壊れ方をしている短いインストM-5「0」を挟み、どれだけの山を盛り込んでいるのかわからなくなるくらいの展開で魅せてくれるM-6「Zodiac」。
邪悪にせせら笑うように吐き捨てるヴォーカルのみならず、歯切れ良く突っ走るリフや匠に溜めを利用して体感速度を上げていくドラム回り、常軌を逸するベースラインが堪能できます。
唖然とするほどの凄まじい速さに反して丁寧に吐き捨てるヴォーカルにポエトリーリーディング風もここまで速くできるのかと感動してしまったM-7「The Sufi」。ギターの荒々しさと美しさが共存しており、発想が素晴らしいですね。
11分と作中最長を誇るが、艶かしいギターフレーズやスラッシーなリフ、ハードロックのドライヴ感を大切にしたまま突っ走るため冗長さとは無縁なM-8「Es」と、初作でこれかと呆然とするアルバムです。
本作のミックスとマスタリングを手掛けたのは橋本貴弘さんのGALAXY BLAST MASTERINGということで、メタルとしての重圧感はもちろんのこと、hellixの持つ独特な繊細さや尖りを見事に活かしたプロダクションも素晴らしいですね。
現在はライヴをほぼ行わないそうですが、かつて3人体制だった頃にはフランスのDagobaの日本公演に帯同していたこともあるので、見ていた方もいらっしゃるかと思います。
にしても、ここまで凄まじいスラッシュメタルアルバムを提示されると文句もありません。
「ドラマティック・スラッシュメタル」と標榜するだけあり、hellixのスタイルは勇壮さと劇的な展開で聴く者を魅了する驚きに満ちています。
カオティックな音楽が好きな人にも、まず外さないでしょう。
大傑作ですので、日本のレコード会社さんは彼らのCDを出していただけると私が喜びます。
1. Montage
2. Dada Construction
3. Cofee Break
4. Stuttering/Exquisite
5. 0
6. Zodiac ★
7. The Sufi
8. Es
(2023/自主制作)
Time/約50分