むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

【インタビュー】Eave

ニューアルバムを出したばかりのポストブラックメタルEaveにメールインタビューを敢行しました。
彼らの実質的な1stアルバム『Phantoms Made Permanent』は、拙著『ポストブラックメタル・ガイドブック』にもレビューを掲載しています。
新譜の話を中心に、インタビューをしています。
では、お楽しみください!




ニューアルバム、おめでとうございます。どのような作品になりましたか?


Brian(Brian Tenison/ベース、ヴォーカル):
ありがとう!『Fervor』を作るのは大変だったね。書きはじめたのは、2019年。練習のためにメイン州からコネチカット州まで通い、パンデミック(世界的大流行)中にほとんどの曲作りとリハーサルを行った。COVID-19のせいで集まれないことも多くて、アルバム(制作)の進行がかなり遅れた。最終的にはゴールラインを超えることができたけどね!




個人的な所感では、よりグルーヴィーになったと思いました。特にベースの音が太いですよね。グルーヴィーでアトモスフェリックというような、独特な質感はどのように試行錯誤していきましたか?


Brian:
君が言っている質感の変化の一部は、Colin (Marston / Krallice)のリアンプとミキシングによるものだね。彼はアルバム全体のトーンに対して、以前のレコーディングとはかなり違うアプローチをしてくれた。アルバムにグルーヴが増したという点に関しては、Caleb(Caleb Porter/ドラム)と俺は、アルバム内でドラムとベースが際立つ瞬間を作るために、より意図的にお互いに協力するようにした。繰り返しになるけど、これはひとつのジャンルでアルバムを作ろうとするのではなく、自分たちがやりたいことを自由にやってみた結果なんだ。




ドゥームメタルのような重苦しさもありますね。


Ian(Ian Stoller/ギター):
このアルバムにはドゥーミーな瞬間があるよ!特定のジャンルの音楽を作ろうという意図は決してないんだけど、「Mirroring」はアルバムにおけるドゥームの影響の最も明確な例だろうな。俺たちは、できるだけ多くの幅を持った楽曲を作ろうとしているし、ドゥーミーなテクスチャーは、俺らが引き出せるインスピレーションのもう1つの源なんだ。




本作の制作にあたって、特に意識したところはありますか?


Ian:
アルバム全体がライヴバンドとして演奏できるように、これまでのように補助的な楽器は一切使わなかった。ギター、ドラム、ヴォーカルだけだ。俺たちはいつも、リリースのたびにもっといいものを作りたいと思っているんだ。特に『Fervor』では、より良いトランジション(セクションとセクションのつなぎ目に入れる「曲の展開をサポートする要素」のこと)を書き、より簡潔な構成にすることに集中した。レコーディングの過程では、バンドとしてもっと手を動かすようにした。Colinに送る前に自分たちですべてのレコーディングを行ったので、時間的な制約がなく、思い通りに録音することができた。

Brian:
今回のアルバムでは、曲の修正もたくさん行った。俺たちが完全に満足するまで何年もかかりっきりだったんだ!




本作のレコーディングスタッフとして、Colin Marston(Krallice)がクレジットされています。彼を選んだのはなぜでしょう?彼の仕事はどうでしたか?


Ian:
俺たちがColinを選んだのは、この手の音楽の経験があったからだよ。彼は何枚ものレコードを手掛けてきたし、俺たちの目指すサウンドを理解してくれると思った。彼のバンドも大好きだから、彼がミュージシャンとしてもエンジニアとしても優れた判断力を持っていることは知っている。彼はとてもプロフェッショナルで、綿密で、思慮深い人だった!彼は大きな決断を下していて、それは彼が俺たちと一緒に素晴らしいアルバムを作ることに注ぎ込んでくれたことを示していたんだ。




本作のカバーは2羽のカラスという象徴的なものが描かれています。これは何を意味していますか?本作のテーマもあれば、ぜひ。


Ian:
カバーアートは物語や歌詞の内容とは直接関係ないけど、俺たちのサウンドに合うと思うイメージを描いたものだよ。アースカラーと自然のイメージは、アルバムの雰囲気に合っていると思う。

Brian:
アルバム自体にテーマがあるわけではないんだけど、俺たちが伝えたかった包括的なムードや姿勢があるのは確かで、歌詞はゆるやかに結びついている。




あなたたちは2016年に結成しました。元々はエクスペリメンタルなデプレッシヴブラックメタルとしてスタートしていますよね。どういった経緯で結成したのですか?


Ian:
冬休みに学校から帰ってきたとき、Brianと俺は一緒に音楽をはじめることにした。俺はオーディオと音楽の学校に通っていたから、音楽全般にとても関心があったんだ。何曲か作ってデモを作ることにした。

Brian:
最初はAlcestのような音楽を作りたかったんだと思う、だから、最初のデモは、基本的に彼らのようなことをやろうという、あまり良くない試みなんだ。だけど時間が経つにつれて、目標や考え方は大きく変化してきたし、どこかで(自分たちにしかできないことを)はじめなければならない!




バンド名はどのような意味でつけましたか?


Ian:
バンド名に意味はないよ。Brianが思いついたんだけど、シンプルで使いやすいし、いい響きだと思ったんだよな。

Brian:
それに、名前から音楽の種類を想像させないところも気に入った。名前を見て、すぐにメタルか何かを期待することはないだろ。




『Phantoms Made Permanent』は陰影のある、湿った美しいアルバムです。沼地のような。デプレッシヴブラックからポストブラックへとシフトするきっかけはあったのでしょうか?


Ian:
自分たちのことをデプレッシヴ(ブラックメタル)だと思ったことは一度もないよ。自分たちの好きな音に自然と引き寄せられるんだ。新しいジャンルの一部になろうという意識的な変化はなかった。

Brian:
確かに、俺たちはデプレッシヴブラックメタルというラベルをあまり意識したことがない。でも、みんなが俺たちをそのように表現するのは理解できる!
きっかけがあるとすれば、自分たちのアルバムがどんなサウンドになり得るかという境界線をなくして、ただ自分たちが聴きたいと思うアルバムを作りたかったということだと思う!




ブラックメタルを表現方法として思いついた理由はありますか?はじめて聴いたブラックメタルと合わせて教えてください。


Brian:
Alcestの『Écailles de lune』を聴いたことが、最終的にブラックメタルに影響を受けた音楽を作りたいと思うようになったきっかけだな。聴いた当時は、想像しうるどんな音楽よりも完璧に近かった。エモーショナルでメロディックな要素は、俺がこの種の音楽を創りたいと最も惹かれるものだね。初めて聴いたブラックメタルのアルバムは、16歳くらいのときに聴いたDarkthroneのアルバムだったかな。

Ian:
若い頃はヘヴィな音楽が好きだったんだ、Brianのおかげでヘヴィな音楽への興味が復活した。お互いに興味のある音楽を一緒に作りたかったんだ。こういう音楽はもともとエモーショナルなので、演奏していてとても楽しいんだよ。初めて聴いたブラックメタルっぽい音楽は、たぶんAlcestだったかな。




バンドメンバーそれぞれの好きなバンドやアルバムについて教えてください。


Brian:
今のところ、好きなバンドをひとつ選ぶとしたら、Katatoniaかもしれない。俺は彼らのすべての時代を愛しているんだよ!『The Great Cold Distance』は、最も好きなアルバムのひとつだ。

Ian:
好きな音楽の幅が広いから、特にお気に入りを選ぶのは難しいね。だけど、自分にとって最も影響力のあるバンドのひとつはLantlôsだよ。彼らもまた、俺が早くからこのスタイルの音楽にのめり込むきっかけとなったバンドであり、一貫して好きなバンドであり続けているんだ。




Eaveの作品を聴いた時、あなたが浮かぶイメージや色、形はありますか?私はくすんだグリーンや、湿地、あるいは森の中を歩くイメージが浮かぶのですが。


Brian:
『Phantoms Made Permanent』には、森の中の魔法や神秘的な生き物のイメージが多い。
一方、『Fervor』には、なだらかな緑の丘と中世の戦場が見えるね。

Ian:
間違いなくアースカラーで、自然界にある色なら何でもいい。人工的、合成的なものは一切使わないんだ!




これからEaveを聴く人たちにメッセージをください。


Blian:
インタビューに時間を割いてくれて本当にありがとう!そして、日本のこの手の音楽のファンの皆さんに挨拶したいね。
いつか会いたい。今回はどうもありがとう。


Eave:
現在はメイン州ポートランドで活動する4人組。
元々はAlcestのような音楽をやろうとしてはじめたバンドだったという。現在はその軛から放たれ、自身の追求するスタイルを表現している。Metallumには最初のアルバムが『Purge』だと記載しているが、これはデモみたいなものでメンバーも気に入っておらず、公式には削除されている。現在はYouTube上でしか聴けない。
2023年リリースの『Fervor』は、KralliceのColin Marstonがリアンプやミックスを手掛けた。
ちなみに中心人物の一人Brian TenisonはObsidian Tongueのライヴメンバーで、大のJ-ROCKフリーク。一番好きなバンドはthe cabs。mouse on the keystoe、LITEといったバンドも好きなようだ。
現在のラインナップは、
Brian Tenison(ベース、ヴォーカル)、Ian Shooshan-Stoller(ギター)、Gabriel Shara(ギター)、Caleb Porter(ドラム)

eave.bandcamp.com



www.youtube.com