むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Wiegedood / There's Always Blood at the End of the Road

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Wiegedood / There's Always Blood at the End of the Road


ベルギーのブラックメタルによる4作目フルレングス。



メンバー全員Oathbreakerに在籍し、Amenraとも関わる3人組です。
デビューアルバムから前作まで“De doden hebben het goed”という各々4曲で統一したコンセプチュアルな三部作をリリースした彼ら。
今作ではそこから抜け出し、9曲入りのオーソドックスなものに仕上がっています。
ブラックメタルを基盤とし、クラストやポストロックを盛り込んだネオクラストに近い怒れるポストブラックという、Der Weg einer FreiheitやWoeらとも共振する佇まいは健在。ですが、今作はより純然としたブラックメタルの装いです。
クリアなプロダクションでも迫力を殺がない爆走を基盤とながらも、今作のコンセプトに「反復」があります。というのも、一つの小節を執拗に繰り返している楽曲が多いんですね。これはデプレ的な陰惨とした空気感を強める役割を果たしていますが、より肉体的にマスロックやテクニカルデスに接近した印象も受けます。Deathspell Omegaからの影響も非常に感じます。
三半規管を狂わすような反復に少しずつ変化を加えてグラデーションのように曲を広げていく手法はM-1“FN SCAR 16”から一貫しています。
ネガティヴな感情をぶち撒けるトレモロや薄気味悪い呪文で神経を苛むM-2“And in Old Salamano’s Room, the Dog Whimpered Softly”、小気味いいスネアの鳴りに反して不穏を煽るリフでDeathspell Omegaに近い不協和音が聴けるM-3“Noblesse Oblige Richesse Oblige”、心地好いドライヴ感を刻むドラムに暗黒的なトレモロと絶叫を繰り返すM-4“Until It Is Not”と既に神経を摩耗するような曲に頭蓋を締めつけられそう。
読経のようなVoと同じフレーズを執拗に反復するギターに爆走するドラムが堪能できる不気味極まりないM-5“Now Will Always Be”、ぎこちなくギターを鳴らす不安定なインストM-6“Wade”を経て、爆発するようなリフと甲高いトレモロで轟音の壁を構築する終盤のスラッジーな展開を効いているM-7“Nuages”の流れも素晴らしい。
血の塊をぶちまけそうな絶叫が悲愴感たっぷりのトレモロと共に眼前に突き出される荘厳なブラックメタルM-8“Theft and Begging”、妖しく揺らめくトレモロの隙間から陰鬱な経文を読み上げるようなVoが耳に残るM-9“Carousel”と、最後の最後まで緊迫感を緩めない構成が見事。
反復の多用という一見シンプルで飽きが早そうですが、爆走感と濃淡の付け方が絶妙で退屈とは無縁です。
前作までの長く取られた時間でめくるめくように展開を変えていく作風が好きな人にも、癖の強さは変わっていないのでオススメできます。
ブラックメタルとしての完成度を高めつつ、殺伐としたマシンミュージックのような空気感も放射する中毒性と即効性に優れた傑作ですね。
ちなみにバンド名は「ゆりかごの中の死」というような意味だそう。


1. FN SCAR 16
2. And in Old Salamano’s Room, the Dog Whimpered Softly
3. Noblesse Oblige Richesse Oblige
4. Until It Is Not ★
5. Now Will Always Be
6. Wade
7. Nuages
8. Theft and Begging
9. Carousel
(2022/Century Media Records)
Time/44:25

Score:9.6/10


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