むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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THE NOVEMBERS / At The Beginning

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THE NOVEMBERS / At The Beginning


日本のロックバンドによる8作目フルレングス。


zeitgeist”辺りから顕著になったインダストリアルやニューウェイヴから吸い上げた艶めかしくも破壊的な意匠が強まった今作。
前作“ANGELS”収録の“BAD DREAM”辺りの路線を突き詰めた印象を受けました。
今作のトピックとして、シーケンスサウンドプロデューサー/プログラミングでyukihiro(L'Arc~en~Ciel/
acid android)が参加していることが挙げられます。
その為、acid androidと共通項を見出だしやすいのは当然かと思います。
オープナーとなる、性急なドラムンベースが煌めくシンセと駆け抜けて破壊的なノイズがぶちまけられるM-1“Rainbow”にはyukihiroは参加していませんが、今作の方向性を決定づける世界を放射しています。
重苦しいドラムビートとチリつくノイズがポップな楽曲に絡みつくM-2“薔薇と子供”の描く頽廃的な景色、一転凶暴さを剥き出しにするマシンビートの重圧が忙しなく迫るM-3“理解者”、浮遊感のあるエレクトロにお経のようなVoがひたひたと歩み寄って絶叫を迸らせるM-4“Dead Heaven”のハードコア的な感情を福音的な前作を引きずったような印象のM-5“消失点”で着地点を消す前半の手法。
ポッカリと空いた穴に液体が満ちているような心地にさせられるM-6“楽園”のトロピカルなポップのような楽観的な不穏さ、ノイズを這わせなから歪なダンスでファンク寄りの世界を魅せるM-7“New York”、作中最もわかりやすいヘヴィネスを見せつけながらも時に重さを消して三半規管を酔わせるようなM-8“Hamletmachine”の行き着く先が酷く丁寧に歌われる美しいアンビエントバラードM-9“開け放たれた窓”であり、多彩な要素を一つにまとめ上げる手腕は上がっています。
個人的には、この路線でいくのであればもう数曲増やすか数曲の尺を伸ばしてより深みに呑まれるカオスを作って欲しくなったのが第一印象でした。
それほどするりと入ってくるし、あっけなく終わるので。
あえて飢餓感を残しているのであれば狙い通りなのかな。
THE NOVEMBERSの音楽は、聴く度に謎の“異物感”があって、それを突き詰めるために聴き続ける見解があるのですが、今作は彼等の作品で最もその“異物感”をより濃く感じられた力作だと思います。
数曲にあるハードコア要素が個人的には素晴らしく美しいと感じられました。
初期に聴けたギターの轟音も懐かしいですが、不穏な電子音を這わせシューゲイザーやインダストリアルの要素を濃くなった現在のTHE NOVEMBERSも作風として好みなので、次の地平が楽しみです。



1. Rainbow
2. 薔薇と子供
3. 理解者
4. Dead Heaven
5. 消失点
6. 楽園 ★
7. New York
8. Hamletmachine
9. 開け放たれた窓
(2020/MERZ)
Time/34:37