むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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T.O.M.B. / Thin The Veil

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T.O.M.B. / Thin The Veil


US/UK/ノルウェーブラックメタルバンドによる初フルレングス。


謎めいたUSのノイズユニットT.O.M.B.のバンド形態による初めての作品です。
ドラムにMayhemのHellhammerを据えており、他にはUKの独りブラックVenomwolfのDuncan Mclaren、元ImmolationのCraig Smillowskiといった堂々たる面子。
元々の悪辣でひしゃげた神秘的なノイズに、輪郭のはっきりしたバンドサウンドを合わせており、案外ブラックメタルとしてきっちり仕上げています。
音楽性としては雑多で、ブラックメタル、インダストリアル、ノイズ、ドゥームを混ぜているのでどことなくMayhemの“Grand Declaration Of War”を彷彿とさせる作品になっているのが興味深い。
開幕怒涛のフルブラストと単調で厭世感を滲ませたリフが拝めるM-1“No Return”は“Chimera”~“Ordo Ad Chao”を彷彿とさせ、退廃的な空気が一気に溢れ出します。
じんわりと侵食していくギターに原始的なドラムを合わせて淡々と展開するM-2“Where The Wretched Lurk”、澱んだ空気を吸い込んだようなプロダクションに邪悪なメロディーが乗っかり疾走するM-3“Pestilence”、気味の悪い呪文を唱えるSEのM-4“Invocation”に呼び起こされるかのようなおぞましいしゃがれた歌唱とハイハットの儀式的なリズムが耳に残るM-5“Thin The Veil”までですでに暗黒の儀式に立ち会ったかのよいうな気分に浸れます。
機関銃の如きブラストと無機質なメロディーが削岩機のような錯覚に陥らせるM-6“Decapitation Of The Gods”の暴虐っぷりや、起伏に富んだリズムパターンを織り混ぜながらプリミティブブラックのようなリフと呪詛を撒き散らすM-8“Escape from Phlegethon”、真っ向からインダストリアルな意匠と崇高なノイズをぶちまけるM-9“License To Depart”、マシンビートに近いどこまでも無慈悲なドラムが吹き荒れるブラックメタルの皮を被った人力EBMであるM-10“Pure Noise Necromancy”といったいわゆるアヴァンギャルドな感性も全面的に押し出しています。
感情の一切を感じさせないながらも邪悪で世を憎むかのような聴き心地を与える今作は、鬱ブラとはまた違う意味でも危険な逸品です。
ちなみにT.O.M.B.とは、“Total Occultic Mechanical Blasphemy(総ての神秘的で機械的な冒涜)”の略だそう。
意訳ですけども。


1. No Return
2. Where The Wretched Lurk
3. Pestilence
4. Invocation
5. Thin The Veil
6. Decapitation Of The Gods
7. Lunar Reckoning
8. Escape From Phlegethon
9. License To Depart
10. Pure Noise Necromancy ★
11. Hellmouth
(2020/Darkessence)
Time/44:41