むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Poppy / I Disagree

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Poppy / I Disagree



USのシンガー/ソングライターによる3作目フルレングス。


前作でも今作の萌芽が散見されていましたが、驚くべき変化を遂げた作品です。
きゃりーぱみゅぱみゅからの影響を公言していたり、日本の“Kawaii”文化を吸い上げて自らのフィルターを通した音楽性を構築していましたが、今作ではそこにMarilyn MansonNine Inch NailsKornProdigyといった彼女の元々持っていたルーツであるインダストリアルなロックやニューメタルの要素を大胆に注入して“怒り”のモードに突入しています。
乾いた電子処理が施されたインダストリアルであるM-1“Concrete”で新章を抉じ開け、前レーベルのマネージメント含む周囲の様々な雑音への反逆とも取れる「私はあなたに同意しません」という決意表明を大々的にぶち上げるエレクトロパンクM-2“I Disagree”の冒頭はなかなかに衝撃的。
妖精の囁きから凶暴なインダストリアルが炸裂する二面性が発揮されたM-3“Bloodmoney”、物憂げで美しくポップなメロディーに悪魔が憑依するようなM-4“Anything Like Me”、ダンスフロアを意識したビートにラウドなギターとMarilyn Mansonみたいな男性Voとのデュエットを披露するM-5“Fill The Crown”、火照った身体を冷却する役割を担う牧歌的なM-6“Nothing I Need”で一息吐かせる流れも見事。
電子音が飛び交うディスコポップに破壊的なノイズが混ざり合うM-7“Sit/Stay”、乱打されるドラムに煽るコーラスと重たいギターが合わさる分裂症気味なへヴィロックM-8“Bite Your Teeth”、穏やかで漂白されたメロディーをたゆたうようなドリームポップM-9“Sick Of The Sun”、美しい歌声に不穏なシンセやノイズが入り交じりながら弾き倒されるメタリックなギターソロがM-1のコーラスに集約されていく仕掛けが施されたM-10“Don't Go Outside”とただ凶暴なだけでなく、彼女のポップアイコンとしての矜持もきっちり保持されています。
今作が何故このようなパーソナルな主張がある作品に仕上がったのかは彼女を取り巻く様々なニュースが何よりも雄弁なのですが、これまで培った彼女の方法論が息づいているので、昔からのファンもきっと喜ぶだろうし新たなファンを獲得できる完成度の高さもあるラウドポップな傑作と言えます。
アートワークの、まるでブラックメタルのミュージシャンのような禍々しさにもしっかりモデル的な可愛らしさがあるのも象徴的ですね。
きゃりーぱみゅぱみゅMarilyn Mansonのような音楽性を取り入れたらこうなる、という妄想も浮かびそうな作品です。
Sumerianからリリースされているのもトピックですね。


1. Concrete
2. I Disagree
3. Bloodmoney
4. Anything Like Me
5. Fill The Crown
6. Nothing I Need
7. Sit/Stay
8. Bite Your Teeth ★
9. Sick Of The Sun
10. Don't Go Outside
(2020/Sumerian)
Time/35:08