むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Runemagick / Beyond the Cenotaph of Mankind


Runemagick / Beyond the Cenotaph of Mankind



スウェーデンデスメタルによる13作目フルレングス。



コロナ禍を経て、4年ぶりとなる新作です。復活してからは3作目となります。
ラインナップに変動はありません。本作のミックスも彼らの髄まで知り尽くしたJohan Bäckmanです。つまり、非常に安定しています。安定していますが、従来よりもほんの少しクリアで、かつラフという絶妙なミックス加減が本作のブルータリティの向上に寄与しています。
彼らの言によれば、「Runemagickの音が滲み出るようなアルバム」とのこと。瘴気が噴出るギターであったり、底冷えするような獣がごときグロウル、しっかりグリップを握って制御しているドラムという根本は変わりません。
特に、Katatoniaでも腕を振るうDaniel Moilanenは、Runemagickでは非常にアグレッシヴで前のめりな要素も出していて、彼のドラムの実は剛腕ぶりが再確認できるでしょう。
首魁Nicklas "Terror" Rudolfssonによる端整な筆致で描かれた楽曲や、妖艶でありながら絶望感強めの聴き心地を与えるリフの心地好さはますます磨き抜かれています。時折クラシカルで美麗なソロを入れたり、ただドゥームなだけ、とは一線を画す奔放なギタープレイが胸を撃ちます。
それは、M-1「Archaic Magick (After the Red Sun)」を聴けばわかるでしょう。
同曲は約12分という長尺ですが、荘厳さを増強した邪悪なメロディーを軸にして、縮尺を自在に操るリフワークが極めて丁寧です。
ドゥームデスの骨骼を保持したまま、体感速度は非常に軽快。これは、時に軽妙なリズムで疾走するドラムであったり、要所要所に盛り込まれるスラッシーな刻みだったりに起因するものが大きいです。
古代情緒溢れるギターメロディーに大きく間を取るVoの絶妙な掛け合いが邪悪な神殿に迷い込むような感覚に陥るM-2「Endless Night and Eternal End」。
寂寥感を煽るディレイにゆったり渦巻くような重厚なリフを重ねて、徐々に速度を上げるドゥームデスの真髄を聴かせるM-3「Revocation of Spectral Paths」。
さらに陰鬱さの奈落に突き落とす重たいギターにシャーマニックなコーラスを重ねる、冒頭から厭らしさの音塊をぶつけてくる邪悪な威容を示すM-4「The Storm Rode Beyond the Firmament」。
艶めかしいメロディーを芯に据え、器用に抑揚をつけるグロウルが孤独と絶望を表現し、徹底的に沈み込むリフも陰惨さを補強するM-5「Nocturnal Deities of Winter」。
丁寧なメロディーラインも印象的な、アンビエンスを効果的に配置したコズミックホラーを表現する生々しくドゥーミーなM-6「Beyond the Cenotaph of Mankind」に至るまで、徹頭徹尾Runemagickの芯に触れられます。
復活後の作品は、少し軽妙な印象もあってキャッチーでもありましたが、本作はそれを残したまま徹底的に暗くて素晴らしいですね。
名作『Envenom』の空気感を吹き込み直したような印象さえあります。
とりあえず陰鬱なドゥームデスを聴きたい方には、まさに本作は古豪の凄味を叩き込まれる傑作ですよ。
ちなみに、RunemagickのファンのことはRunemagickianと呼ぶそうです。

Runemagickのインタビューも合わせてどうぞ。

bluecelosia.hateblo.jp



1. Archaic Magick (After the Red Sun)
2. Endless Night and Eternal End
3. Revocation of Spectral Paths
4. The Storm Rode Beyond the Firmament
5. Nocturnal Deities of Winter ★
6. Beyond the Cenotaph of Mankind
(2023/Hammerheart Records)
Time/48:04

Score:10/10


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