むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Obituary / Dying of Everything


Obituary / Dying of Everything



アメリカのデスメタルによる11作目フルレングス。



メモリアルアルバムとなった前作『Obituary』を経ても、変わらぬ高品質の血腥いデスメタルを繰り広げています。
違う味と言えば、ギターが北欧デスと北米デスの狭間に位置するような、独特の質感を聴かせるということ、またメロディーにメランコリックな色が濃くなって若干ゴシックなフレーバーがついている印象。
アルバムタイトルも、「つけたことなかったんだ」と錯覚してしまうくらい、ド直球の死にまつわるフレーズ。『The End Complete』くらいストレートですね。
John Tardyの、まとわりつくようなヌメッとしたVoも、もっさりした感触の鈍く締め上げるようなドラミングも健在です。
それに伴い、前作とは打って変わって湿気を感じる猟奇的なプロダクションになっているのは嬉しいところ。
M-1「Barely Alive」の豪快なドラムに乗せて絞り上げるような絶叫や鋸で引くようなリフの重圧感は、「Obituaryはこうでなくちゃ」というような喜びがあります。
弱火にかけてじっくり煮殺すようなイントロと心地好いドライヴ感の対比が効いているM-2「The Wrong Time」、ねっとりとした分厚いリフを捏ねくり回して奈落に突き落とす圧殺感があるM-3「Without a Conscience」、世相を反映したSEを交えて絶望感や鬱屈さを表現した演奏に枯れたブルージーなギターを合わせる侘び寂びのある展開も楽しいM-4「War」と、ベテランの矜持をこれでもかと堪能できます。
表題曲となるM-5「Dying of Everything」は、名作『Cause of Death』を彷彿させる流麗なフレーズをさらりと織り交ぜたり、激速の疾走感に頼らないドライヴ感をがある非常に凝った展開が楽しめます。
重心を落としたチューニングで磨り潰すような暗黒感が心を蝕むM-6「My Will to Live」、バウンドするようなリフから耳を引くメロディックなフレーズを堪能できるM-7「By the Dawn」、シンプルな疾走感と鈍い質感のギターのコンビネーションが映えるM-8「Weaponize the Hate」、立体交差するようなリフワークとドライヴするベースの肉厚なランデブーが楽しいM-9「Torn Apart」、重苦しいグルーヴとドゥーミーなギターでアルバムを総括するM-10「Be Warned」と、徹頭徹尾Obituaryです。
地道なマイナーチェンジというか、緩やかな変化を取り入れるバンドなので、新鮮!という感覚はあまりありません。
ただ、本作はコロナ禍からロシアのウクライナ侵攻といった時勢を通過した視点が歌詞には感じられ、非常にシリアスなものになっています。こういう重苦しい空気を消さない真面目一徹なアルバムも珍しいのでは。
とは言え、Obituaryらしい作品ですよ。



1. Barely Alive
2. The Wrong Time
3. Without a Conscience
4. War ★
5. Dying of Everything
6. My Will to Live
7. By the Dawn
8. Weaponize the Hate
9. Torn Apart
10. Be Warned
(2023/Relapse Records)
Time/44:57


Score:8.8/10


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