むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Man Must Die / The Pain Behind It All


Man Must Die / The Pain Behind It All



イギリスのテクニカルデスメタルによる5作目フルレングス。



ポストロックの聖地グラスゴー出身のテクニカルデスメタルバンドです。
オリジナルアルバムとしては約10年ぶりの作品となります。
前作『Peace Was Never an Option』が凄く好きなアルバムで、今か今かと待っていた作品です。
沈黙している間にメンバーも変わり、オリジナルメンバーはVoのJoe McGlynn、ギターのAlan McFarlandのみ。とは言っても、現編成になって5年は経過しているので、安定感のある演奏が楽しめます。
ハードコアから抽出した衝動性のあるデスメタルという基盤は健在。本作では、前作よりもダークで閉塞感のある、叙情的な表情も濃くなっています。
ロディアスになったからと言ってメロデス的かと言われるとそうではなく。
オープナーである突進力のあるドラムに歯切れの良い単音リフを合わせるM-2「Patterns in the Chaos」を聴けばわかるように、あくまでテクニカルなデスメタル。この辺りのバランス感覚はさすごの貫禄ですね。
チューニングの妙もあって、グルーヴィーで耳が気持ち良くなるリフが本当にいい塩梅。
わざと粗さを残していたようなプロダクションの前作と比べると、本作は極めてソリッドで整合性がありますね。
艶めかしいギターメロディーと重心の低いリズミックなリフの相乗で威圧感を演出するM-3「The Pain Behind It All」、一転して強靭なブラストと高速の刻みで転がるように駆け抜けていくM-4「In the Hour Before Your Death」、爆発するようなドラムと飛び道具のようなリフの心地好さが映えるM-5「Clickhate」と、前半だけでもバラエティに富んだ楽曲を配置しています。
ちなみにインストであるM-1「O.C.D.」は強迫性障害のことです。頭蓋を締め付けるようなノイズがそれっぽい雰囲気を構築していますね。
厳かなキーボードに倦怠感の滲んだ歌を乗せたイントロからギターのハーモニーでグルーヴ感を構築するメロディアスなデスメタルに仕立てたM-6「Enabler」、凄まじい足数のドラムやスラッシーなビートを織り交ぜて立体交差するようなリフで畳み掛けるM-7「Bring Me the Head of the King」、冷たいトレモロの叙情と暴虐的な雪崩が渾然とした爆走に気味の悪いリフが複雑に噛みつくM-8「War Is My Will」と、中盤から終盤にかけての流れも手抜かりない緊張感に溢れています。
涅槃のような現実感の消失を表現しているようなインストM-9「Alone in a Crowded Room」とM-10「Who Goes There? / I.F.F.」は組曲のようになっており、最後を締め括るに相応しいスラッシーな突貫を主とした猛烈なデスラッシュです。
「I.F.F.」は「Identification Friend or Foe」の略で、敵味方識別装置を意味すると思います。それを踏まえると、冒頭の「O.C.D.」がまた違った意味を持つ仕掛けになりますね。
結成20年を超えたベテランなだけある、ブランクを物ともしない激烈な一枚に仕上がっています。
リフのハーモニーが本当に気持ち良く、ハードコアの衝動もしっかりパッケージされた素晴らしいアルバムですよ。
凄まじい技量を押しつけがましくならないように聴かせる、かなりバランスのいいテクニカルデスメタルという意味でも、Man Must Dieの変わらない特異性を感じられる一枚ですね。
ちなみにフィジカルですが、CDと記述されてますがpro-CD-Rだったので、気になる人は気になるかもしれません。



1. O.C.D.
2. Patterns in the Chaos
3. The Pain Behind It All
4. In the Hour Before Your Death
5. Clickhate
6. Enabler ★
7. Bring Me the Head of the King
8. War Is My Will
9. Alone in a Crowded Room
10. Who Goes There? / I.F.F.
(2023/Distortion Music Group)
Time/39:55


Score:9.1/10


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