Ὁπλίτης / Ψευδομένη
中国のブラックメタルによる初フルレングス。
Vitriolic Sageという独りバンドのJ.L.ことLiu Zhenyangなる人物の別バンドです。
このプロジェクトでは、「Λοιδορία」なる名義を使用しています。
バンド名はそのままだと全く読めないですが、「重装歩兵」を意味する古代ギリシャ語のホプリテス。
アルバムタイトルは「偽り」とか、そういう意味になるそう。
年始から好事家の間にて話題になったこのバンドですが、有り体に言ってしまうとDeathspell Omegaから影響を受けていると思しきスタイルです。
特に『Fas - Ite, Maledicti, in Ignem Aeternum』〜『The Synarchy of Molten Bones』くらいのDsOからの影響をビシバシ感じる音です。
乱反射するかのような薄気味悪いトレモロと生か打ち込みかはどうでもよくなるほどの速度で暴虐を振り撒くM-1「Δημήτηρ」から、飛ばしまくってますね。
彼のドラムの作り込みは、Anaal NathrakhやBehemoth的と言っていいほど圧が強く、ブラッケンドデスメタルと呼んでしまえるくらいの厳つさがあります。
単音リフを捏ねくり回しながら爆速のドラムの中で絶叫が乱舞するM-2「Ψευδόμαντις」、中音域のがなり声と威圧感のある荘厳なリフで押し切るファストブラックM-3「Ψευδομάρτυς」、DsO以降を感じる乱反射するトレモロが陰鬱な気を放射するグルーヴ重視の儀式的な序盤から徐々にギアを上げて激走に雪崩れるM-4「Ὁ τῶν δακρύων ψεῦδος」、悲愴感あるトレモロを変則的なリズムに乗せるM-5「Ὁ τῶν δακρύων ἄγγελος」と、息を吐かせぬ楽曲が並びます。
タイトルを見てお気づきかもしれませんが、本作はある種のコンセプトがあるようで、曲名の並びに法則があります。
例えばM-4は「涙は嘘をつく」、M-5は「涙の天使」というような意味になるような。言葉遊びのようでもありますね。
『Kolossus』期のKeep of Kalessinを思わせる豪胆なギターオリエンテッドやドラムで重圧感たっぷりの演奏を叩きつけるM-6「Μάντις」、耳障りなトレモロで強迫観念を煽るようなイントロや速度を緩めぬ爆走が心地好いM-7「Μάρτυς」、渦を描くようなリフで暗黒空間を削り出す複雑怪奇なリズムセクションも癖になるM-8「Θελκτήριον」、シンプルな構成のリフに唸りを上げるベースで凶悪なドライヴに聴く者を引きずり回すM-9「Δηλητήρ」と、37分とコンパクトにまとめていますが、過不足なく構成しています。
中国のブラックメタルらしいオリエンタルなメロディーはあまりなく、Deathspell Omegaらフレンチブラックのような余韻を味わえるでしょう。
哲学的な思惟といった風情もあり、ギリシャ語で綴られた歌詞と相俟って独特の味わいもあります。
BandcampではNYP(投げ銭)で、様々な層にもアクセスしやすいかと思います。
1. Δημήτηρ
2. Ψευδόμαντις
3. Ψευδομάρτυς
4. Ὁ τῶν δακρύων ψεῦδος
5. Ὁ τῶν δακρύων ἄγγελος
6. Μάντις ★
7. Μάρτυς
8. Θελκτήριον
9. Δηλητήρ
(2023/自主制作)
Time/37:19