むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Vāmācāra / Cosmic Fires: The Enlightenment Reversed


Vāmācāra / Cosmic Fires: The Enlightenment Reversed


ドイツのデスメタルによる初フルレングス。



その名の通りラヴクラフトをテーマにしたブラックメタルCtuluにいたArne UekertことAと、Nという人物による2人組です。
Aがギター、Vo、ベース、Nがドラムの編成ですね。
AnvilやDew-Scentedなどとの仕事でも知られるJörg Ukenがミックスとマスタリングを手掛けています。
バンド名はサンスクリット語で「左利きの達成」というような意味であり、ヒンドゥー教の宗教儀礼においては異端に近いもののよう。
その音楽性ですが、デスメタルをベースに70年代のクラシックロックやプログレッシヴロック、サイケデリックロックの要素を大々的に注入したもの。
こう聞くとMorbus Chronを思い出しますが、あちらよりもソリッドなプロダクションになっており、リヴァーブがガンガンにかかっている類の音像ではありません。優美さはあるもののソフトな印象はなく、アグレッションも十二分に発散されています。
また、クリーンVoも時々出てきますが、語りに近く、プログレッシヴデスメタル的な佇まいを濃くしています。加えて、ゲストかサンプリングかは不明ですが、時折被せてくる女性コーラスは楽曲の呪術的ないかがわしさや妖艶さを存分に引き立てる役割を担っています。
非常に入り組んだ複雑なドラムと乾いたグロウルの影響で、デスメタルとしての攻撃性を存分に発揮していることは、M-1“Tara of the Cremation Grounds”からもわかるでしょう。
技巧的な一面だけでなく、邪悪で陰湿なメロディーのおかげか、呪術的な雰囲気もふんだんにあります。
鬱々としたリフと威圧的なVoに被さるシャーマニックなコーラスが得も知れぬ暗さを叩きつけるM-2“Alchemical Symbolism”、複雑怪奇なリズム感覚で叩かれる硬質な鳴りのドラムと歯切れの良いグロウルや絶叫が楽しいM-3“Vintage Filth Merchants (Yaşlı Pislik Tacirleri)”、残響を仕込んだギターの病んだ美しさと重厚さを押し出したドゥームデスに接近した重苦しい奈落に叩き落とすM-4“Moonbeam Trails”、複雑なパターンのドラムや骨を削り取るようなベースにシャーマニックなコーラスや囁きを織り交ぜた妖しさを振り撒くM-5“Rat Saliva”、沈鬱なギターでゆったりと渦を巻くようなグルーヴから一気呵成に暴虐性を解放して幕を下ろすM-6“Brought Up by the Moon”と、非常に凝ってはいますが、コンパクトなアルバムです。
何せ、32分ですからね。
とは言え、かなり緻密に音を構築しているのもポイントであり、この辺りはKing CrimsonやToolの影響を感じます。“Rat Saliva”に出てくるリフには、Toolを思い出してニヤリとする人もいるのでは。
複雑で難解な印象を与えますが、物凄くキャッチーなアルバムでもあるので30分程度のランニングタイムのため、リピートにも適しています。
パッと耳を引くメロディーの妖しさが中毒性を高めた完成度の高い傑作です。



1. Tara of the Cremation Grounds
2. Alchemical Symbolism
3. Vintage Filth Merchants (Yaşlı Pislik Tacirleri)
4. Moonbeam Trails
5. Rat Saliva ★
6. Brought Up by the Moon
(2022/MDD Records)
Time/32:01


Score:9.5/10


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