むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Bizarrekult / Den tapte krigen


Bizarrekult / Den tapte krigen



ノルウェーブラックメタルによる2作目フルレングス。


ロシア出身ですが、活動拠点はノルウェーオスロのバンドです。
さて、本作ですが、前作と音作りが大きく変わっているわけではありません。本作にはロシアの小説家ヴィクトル・ペレーヴィンの様々な人を昆虫になぞらえた『虫の生活』という書籍を下地に組まれたコンセプチュアルな背景があります。
高音域で圧の強いトレモロや、ややドライな質感のプロダクションといった骨格は健在です。この辺りの音像は、まさにポストブラックメタルと言えるでしょうか。
前作でもポストロックから吸い上げたようなダイナミックな音展開はありましたが、それは本作でもますます磨かれ、彼らの特異性として表情を濃くしています。展開の山場をいくつも設けており、極めてエモーショナル。そして、洒脱で大自然というよりは都市を彷彿させる作品に仕上がっています。
そんな都会的でシネマティックなサウンドスケープと拮抗するように、妖精のような女性コーラスの頻度は高くなり、オープナーとなるM-1「Du lovet meg」からそれを象徴していますね。
骨を削るような太いベースラインに世を倦むようなメロディーで陰鬱な空気を発散するM-2「Kongen」、ゆったりした歩調に儚くも柔らかなトレモロを合わせてダイナミックに開放感を演出するM-3「Den tapte krigen」と美しさと病んだ感傷をスイッチするスタイルはますます磨かれています。
Depeche Mode風の重々しく退廃的なビートのままブラックメタルを展開するM-4「Hvis jeg bare kunne...」、一転して腰を据えた重厚なドラムにニューメタルの面影を垣間見られるアグレッシヴなパートに美しいコーラスパートを重ねるM-5「Midt i stormen」、独特な質感のギターが物憂げなメロディーを爪弾きしゃがれ声と合わさり冷たい静寂と荒々しい疾走を噛み合わせるM-6「Kjære barn」と、中盤の流れも美しいですね。
前作ではここまで展開を複雑にはしていなかったので、バンドとしての自信と視座の高さが伺えます。
太いベースと重圧感のあるリズムアプローチがラウドロックプログレデスを縦横無尽に行き交い威容を示すM-7「Løslatt」、物言いたげなトレモロのミステリアスな雰囲気やほのかに明るい叙情が空へと伸びるようなM-8「Himmelen er utilgjengelig」で幕を下ろす、余韻も心地好い一枚です。
様々なヴォーカルアプローチを取るため、声の持つ魅力も本作の素晴らしさの一助となっていますね。
中心人物のRoman Vの幅広い音楽のリソースや文学的なアプローチにギタリストの気づきが加わることで、幾重にも可能性を拡げさせるような、そんな拡がりを感じるアルバムです。
感傷を呼び起こすドラマ性もしっかり息づいています。
単純にメランコリックで美しいブラックメタルが聴きたい方にもオススメしやすいですね。

本作の理解を深めるために、こちらのインタビューと合わせてお読み下さると嬉しいです。
bluecelosia.hateblo.jp




1. Du lovet meg
2. Kongen
3. Den tapte krigen
4. Hvis jeg bare kunne...
5. Midt i stormen
6. Kjære barn
7. Løslatt ★
8. Himmelen er utilgjengelig
(2023/Season of Mist Underground Activists)
Time/42:27


Score:9.4/10


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