Limbes / Ecluse
フランスのアトモスフェリックブラックメタル/ポストブラックメタルによる初フルレングス。
Blurr Throwerという独りバンドがフルアルバム『Les voûtes』リリース後に変名したのが、このLimbesです。
改名の意図は不明ですが、本作で大きくスタイルが変化したかと問われると、否です。
Blurr Throwerも最初期はデプレッシヴブラックメタルでしたので、脱力したようにひたすら叫ぶヴォーカルを含め、その要素の揺り戻しがあるのは確かです。『Les voûtes』をベースに、エレクトロシューゲイザーが如き質感のトレモロが吹き荒れる作品になっています。
この電子音楽風の雰囲気の増大の結果、アトモスフェリックブラックメタルに接近しており、ノイズコーティングがもはやドローンのように聴こえる瞬間もありますね。チープさがプリミティヴブラックみたくもあり、塩梅が絶妙。
『All Fell Silent, Everything Went Quiet』期のAn Autumn for Crippled Childrenから可憐さを抜いた感覚もあります。それくらい殺伐とはしています。
ノイジーさは増し、M-1「Lâcheté」でも基本的には疾走感を押し出しています。とは言え、この曲でも聴けるように、アルバムの骨格はどこまでも絶望するような暗いメロディーです。
弛緩したような悲痛な絶叫はBlurr Throwerの時よりも悲観的で、聴く者の心を掻き毟るよう。
言葉にならない絶叫をメランコリーを前面に出したトレモロに乗せて疾走して圧を強めるブラックメタルらしい狂気的な表情を押し出したM-2「De courbes & de peaux」、絶叫とノイジーなトレモロが渦巻く阿鼻叫喚に仄かに明るいメロディーを溶け込ませることで得も知れぬ美しさを表出するM-3「Corridors」、心の闇を抉り出すような陰鬱なトレモロを爆発させるような序盤から乾いたスネアが心地好くステップを刻む展開を織り込むM-4「Leurre」と、曲数は少ないながら濃密な約40分です。
1曲が長いですが、意外と一辺倒ではなく、乱反射するようなトレモロが心を蝕むようなアルバムですね。
じくじくと血が滲むような陰惨さが表に出たデプレッシヴブラックメタルの色もBlurr Throwerより濃いので、精神状態には注意した方がいいかもしれません。
この振り切り方が、改名の理由にも繋がる気もしますが、単純にBolt Throwerと重なるのが嫌という可能性もなきにしもあらず。
ノイジーさの向こう側から、血塗れの男が凄絶な笑みを浮かべてそうな…。
そんな不穏なアルバムに仕上がっているので、寒々しい今の季節にぴったりですね。
1. Lâcheté
2. De courbes & de peaux
3. Corridors
4. Leurre ★
(2023/Les Acteurs de l'Ombre Productions)
Time/39:13