むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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【インタビュー】Falaise / Morwinyon


イタリアのブラックゲイズFalaiseにメールインタビューを敢行しました。
『ポストブラックメタル・ガイドブック』にも深く関わるバンドなので、拡張版として楽しんでいただければ。
彼らのサイドプロジェクトでもあるMorwinyonのことも少し聞きました。
バンドの写真は存在していないようなので、ロゴやアルバムカバーを使用しています。




Q. 『After All This Time』、リリースおめでとうございます。反響はどうでしょうか?また、本作はどのようなアルバムになっていますか?


A. 反応はとてもポジティブだよ。ついに僕たちが長い間望んでいたレコード盤を手に入れることができたんだ。『After All This Time』では、大勢の人が集まる大都会が僕たちにもたらす孤独に焦点を当てたよ。(孤独と)矛盾しているようだけど、多くの人がこのような感覚を持っているからね。




Q. 『After All This Time』はFalaiseの今までの良さが存分に発揮されたアルバムですよね。ドリーミーな部分はさらにドリーミーで。攻撃的な部分もしっかりあります。苦労した点やうまくいった点を教えて下さい。


A. ありがとう。今回は、ポストロックやシューゲイザーの要素を取り入れつつ、ブラックメタルとしての側面も残したかったんだ。だから、より攻撃的なリフとは対照的に、ソフトなパートをよく聴くことができるね。その難しさは、主にミキシングの段階で、ドリーミーなセクションとブラックメタルのより生々しいサウンドとのすべての効果をバランスよく調整することにあったよ。




Q. 「One Day」には、90年代のシューゲイザーを強烈に感じます。元々Falaiseはこういう音作りは得意だと思いますが、さらに現実感が乏しくて素晴らしいです。この曲の着想はどういったところからでしょう?


A. アルバムにはもっとストレートな曲を入れたかったんだよね。複雑でなく、より直接的で、短いけどインパクトのある曲。「One Day」は、ファーストアルバム『As Time Goes By』のサウンドに近い曲で、とても満足しているよ。




Q. 「Feeling Out of Place」は、特にギターが素晴らしいですね。美しいメロディーと、ノイジーなチューニングで。ブラックメタルということも忘れていません。Falaiseはどんなにドリーミーでも、芯はブラックメタルですよね。このバランスはどのように保っているんでしょう?


A. 2つのサウンド(前述のポストロック/シューゲイザーブラックメタルの要素)のバランスを取るように心がけていて、クリーンなギターパートとトレモロセクションやブラストビートを交互に配置することが多いかな。耳障りな嗄声(のようなヴォーカル=Scratching Voice)も、サウンドブラックメタルに固定させているね。




Q. Falaiseは2015年結成ですね。どのような経緯でバンドを結成するに至ったのですか?


A. 僕たちは何年も前からお互いを知っていて、ある地下室で様々なカバーを演奏しはじめたんだ。そのうちにオリジナル曲を作ることに興味を持つようになり、何曲かレコーディングを試みて、2014年にFalaiseの前のプロジェクト(探しきれなかったです…)でポストロックのEPに仕上がったんだよ。次の曲は、Falaiseのファーストアルバムに収録されたんだ。





Q.はじめて聴いたブラックメタルを覚えていますか?


A. 最初はAustereの素晴らしいアルバム 『To Lay Like Old Ashes 』だったかな。このアルバムは僕らに多くの影響を与えているね。同じ頃、Alcestの『Souvenirs d'un autre monde』も、ドリーミーでシューゲイザー的な路線で、とても影響を受けたアルバムだね。




Q. Falaiseのスタイルは、ブラックゲイズと呼ばれますよね。このスタイルに辿り着くきっかけなどはありましたか?個人的な感想にはなりますが、Falaiseはブラックゲイズの中でもシューゲイザーからの影響をしっかり感じます。


A. 僕たちがこのジャンルの音楽を始めたのは、当時Alcest、Heretoir、Austere、 Woods Of Desolationといったバンドに魅了されたからだね。このジャンルの魅力は、ただ生々しいブラックメタルではなく、よりソフトで優しいブラックメタルに、しばしば重い絶望的な雰囲気があることだった。このコントラストが、ブラックゲイズが僕らの愛する素晴らしいジャンルである理由だよ。




Q. Falaiseの歌詞のテーマは悲しみや絶望、といったネガティヴなものだと聞いています。これは、あなた方が元々はデプレッシヴブラックメタルから進化してきたことと関係はあるのでしょうか?


A. Falaiseの音楽はダークで、人間のより深く悲しい感情を探求しているんだ。確かにデプレッシヴブラックメタルは強い影響を与えたけど、Falaiseは常に孤独とそこから生まれるものをテーマにしてきたんだ。




Q. 2020年からはじめたMorwinyonについても聞きたいです。Falaiseとは全く違うスタイルですが、どのような経緯でMorwinyonをはじめたのですか?Falaiseと比べると、土着的でファンタジックです。Unreqvitedも、ものすごくいい仕事ができた、と言っていました。


A. 僕たちが書いていたいくつかの曲は、Falaiseのテーマには合わない、より長く、より壮大なメロディーを持つものになってきた。このことから、僕らはこのタイプのブラックメタルを探求しはじめ、4曲できたところで、Morwinyonという新しい名前でアルバムをリリースしたんだよ。




Q. Morwinyonも『Wastelands』をリリースしますよね。Falaiseもアルバムが出たばかりで、とても精力的です。同時期にレコーディングされたのでしょうか? また、『Wastelands』はどのようなアルバムになっていますか?


A. Falaiseのアルバムは『Wastelands』の数ヶ月前にレコーディングしたんだ。両アルバムともレコーディング後の待ち時間は、レーベルとの契約や物理的なアイテムの制作にかかる時間によるものだね。
『Wastelands』は、人類がいかに世界を破壊しているかを伝え表現しているんだ。自然が危険にさらされる方法はたくさんあるけど、僕らが火の要素に注目したのは、数分のうちに最も壊滅的な被害をもたらすからだね。







Q. Falaiseはライヴをしませんよね?理由はありますか?Morwinyonの結成はコロナ禍の真っ最中ということもあり、ライヴの実現は難しかったと思いますが。


A. 僕たちはデュオだから、ライヴをしたことがなく、当分計画も立てていないよ。Covid-19はこの点には影響ないかな。




Q. 影響を受けたバンドやアルバムについて教えてください。(最近気に入ったものでも、オールタイムでも)。


A. 主だって好きなバンドは、Alcest、Heretoir、Austere、Amesoeurs、Woods Of Desolation、Lustre、Trist、ColdWorld、Sadness、Violet Cold、Deafheavenかな。




Q. イタリアのメタルシーンを、どのように見ているのでしょう?そもそも、Falaiseは特定のシーンに属している印象はないですが。


A. イタリアには素晴らしいバンドがいくつかあり、僕らのお気に入りのバンドはFleshgod Apocalypseで、このバンドも僕らが住んでいる場所の近くの都市で結成されたんだよね。でも、正直なところ、僕たちはイタリアのシーンをフォローしていないんだ。ほとんどのバンドは、僕たちが楽しんで聴けるようなスタイルを演奏していないからね。その通り、自分たちが特定のシーンに属しているという感覚はないんだ。




日本のファン、これからFalaiseやMorwinyonを知る人にメッセージをお願いします。


日本は素晴らしい国であり、そこにファンがいることを本当に嬉しく思っているよ。このようなインタビューの機会を与えてくれ、そして僕らを応援してくださったファンのみんな、これから応援してくれるみんな、本当にありがとう。



Falaise :
2015年イタリアのトーディで結成、『As Time Goes By』でデビュー。
当初からライヴを行わず、音源のみで活動している。シューゲイザーやポストロックの要素を大々的にブラックメタルへ盛り込み、ドリーミーなメロディーを主軸にしたブラックゲイズのスタイル。
現在は、イタリアのポストブラックメタルやアトモスフェリックブラックメタルに強いレーベルFlowing Downwardに所属。
2023年、通算4枚目のアルバム『After All This Time』を発表した。

Morwinyon :
FalaiseのメンバーがFalaiseとは異なる世界観を表現するために、2019年始動。
Unreqvitedの鬼もミキシングとマスタリングで参加している『Pristine』をNaturmacht Productionsからリリースし、アルバムデビュー。
ブラックゲイズに忠実なFalaiseと異なり、よりアトモスフェリックブラックメタルに近く、時に土着的なブラックメタルを追求している。
こちらもFalaiseと同じく、ライヴ活動は行わない。2023年に『Wastelands』をリリースしたばかり。

現在のラインナップはFalaise、Morwinyon 共に
Lorenzo Pompili(ギター/ベース)、Matteo Guarnello(ヴォーカル/キーボード/ドラム)



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Falaise『After All This Time』のレビューはこちら