むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Petit Brabancon / 渇き


Petit Brabancon / 渇き


日本のラウドロック/オルタナティヴロックバンドによるEP。



DIR EN GREYの京による、DIR EN GREY、sukekiyoに続く第3のバンドです。
L'Arc~en~Cielのyukihiro(Dr)、MUCCのミヤ(g)、THE NOVEMBERSの高松浩史(b)、Tokyo Shoegazerのantz(g)というラインナップ。
いわゆるスーパーバンドとカテゴライズされるだろうメンバーですね。
今作は、昨年デジタルリリースされたシングル“刻/渇き”の曲順を変え、一曲追加したものです。
その話題性の高さから一気に注目を集めましたが、肝心の音楽性は現時点では90年代終盤から00年代初頭に世界を席巻したニューメタルとしか言えないです。
メンバーのバンドで例えるなら、MUCCが一番近く、DIR EN GREYの“Sustain The Untruth”、L'Arc~en~Cielの“As One”“Revelation”などが近い音として想像しやすいかと。
そこに控えめながらシューゲイザーのような音を入れ込んだり工夫が見えます。
ただ今作、Petit Branbanconというバンドの真価がほとんどわからないです。
一番の理由として、テンポがほとんど似ていてミドル〜スロウで掴みが弱いという点にあります。基本的には淡々としているんですね。
良く言えば統一性があり、悪く言えば冗長に感じられます。
ニューメタルやラウドロックといったスタイルと言えど、彼らのグルーヴにヒップホップやファンクは希薄なのでそこがどう感じられるかが好き嫌いの分かれ目なのかなと。
このスタイルって、リズムの跳ねや溜めで個性を出したりするのが肝だと思うので。
個人的には、重苦しさにグランジシューゲイザーといったオルタナティヴロックの清涼感が加味された部分に面白みを感じていて、これは高松氏やantz氏を入れたことによるものかなと思ったりしています。なので、今後の展望というか期待として、彼らの色をもっと大々的に注入してほしいというか。
このバンドのメロディー感には、DIR EN GREYやsukekiyoにあるような妖しさや美しさが今のところ感じないんですね。かと言ってMUCCみたいな軽妙さがあるわけでもなく。MUCCの時々ファンキーな歯切れの良さは逹瑯氏由来なのかという再発見もあったり。
今のところ、「重圧感」や「閉塞感」がこのバンドのキーワードかなと。
淡々としていると言っても、各曲の個性は皆無ではないです。
M-1“渇き”は重心の低さを軸にした陰鬱で攻撃的なリフを聴かせるし、M-2“刻”は青白いエモーショナルなメロディーを主役にした若干ポップなラウドロックです。アウトロのシューゲイザーに似たノイズが効いていて良いです。
一番個性が立っているのはM-3“OBEY”で、祭囃子のようなテンポ感とBUCK-TICKに似た歌い回しが目立つハジケ曲。追加されたM-4“A Praying Man”は“渇き”と“刻”の中間にあるような曲で、コーラスパートに重きを置いているよう。この中では一番DIR EN GREYのフィーリングを感じます。
歯切れの良さで聴かせるスタイルではないので、ぐいぐいと引き込む即効性のある類の作品ではないですね。随所で感じられるどこか据わりの悪さのようなものが、バンドの個性か単なる新人バンドのぎこちなさなのか、今のところわかりかねるなというのが率直な感想です。
とは言うものの、バンドのポテンシャルがまだまだ掴みづらいので、ライヴやアルバムでどう印象が変わるか楽しみです。
昨年末の時点で、すでに今作の4曲を含む13曲は世に出せる状態らしいので、アルバムもそう遠くない未来に聴けると期待したいところ。


1. 渇き
2. 刻 ★
3. OBEY
4. A Praying Man
(2022/Maverick
Time/14:59



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