むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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An Autumn For Crippled Children / All Fell Silent,Everything Went Quiet

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An Autumn For Crippled Children / All Fell Silent,Everything Went Quiet


オランダのポストブラック/ブラックゲイズバンドによる8作目フルレングス。


前作で久しぶりに聴きましたが、もはやブラックゲイズとシューゲイザーの垣根を曖昧にしたバンドになっていて、驚きました。
今作ではブラックメタルに若干揺り戻していますが、M-1“I Become You”のイントロのギターと淡いドラムがかなりシューゲイザーしていてニヤリとしました。
メロディーはそれに伴い、非常に明るい感覚に変わっており、Voの悲痛な絶叫を除けば物憂げなシューゲイザーよりもさらにブライト。
ぐしゃぐしゃと駆けるドラムの上にかかるトレモロで花吹雪が舞うようなM-2“Water's Edge”、一転冷たいトレモロで吹雪く浮遊感を強調するM-3“Everlasting”、シャリシャリとしたノイズがずらしたような拍の裏でうっすらと舞うM-4“Paths”、爆発するギターに合わせてブラストビートがけたたましく駆け抜けて疾走感を強調するM-5“Silver”に至るまで、オルタナティブブラックメタルを微睡むように行き交う音像を確立していることが伺えます。
薄闇に溶けるような美しいメロディーが印象的で炸裂する絶叫も何だか幻想的なM-7“All Fell Silent,Everything Went Quiet”、鮮やかに花開くようなトレモロが華やかなポップですらあるM-8“The Falling Senses”、仄かに邪悪さを強めつつ壮大な景色を見せつけるアトモスフェリックブラック顔負けのM-9“Craving Silence”、分厚いトレモロに銀盤を合わせて穏やかに幕を下ろすM-10“Distance”と、甘酸っぱさすら感じる作品に仕上がっています。
Deafheavenから激しさをスポイルしたような作風ですが、意外とここまで開き直った作風のバンドもいないので独自性はあります。
パンチ力や即効性があるわけではないですが、明るく狂ったような世界観も垣間見ることもできる、いい作品ですよ。


1. I Become You
2. Water's Edge
3. Everlasting ★
4. Paths
5. Silver
6. None More Pale
7. All Fell Silent,Everything Went Quiet
8. The Falling Senses
9. Craving Silence
10. Distance
(2020/Prosthetic)
Time/39:11