むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Inexorum / Moonlit Navigation

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Inexorum / Moonlit Navigation


USのブラックメタル/メロディックデスメタルバンドによる2作目フルレングス。



北欧のバンドかと思いきや北米というのにまず驚くこと請け合いの音楽性で、非常に湿り気のある叙情性に富んだメロディーが聴けます。
トレモロ吹き荒ぶ絶対零度のギターはブラックメタル的でありながら、単音リードや美麗なソロが立ち上る様はメロディックデスメタル然としており、両者のいいところどり。
どっちつかずではなく、いい具合に混ざり合っています。
悲哀が滲んだギターメロディーが耳を引くオープナーM-1“Ouroboric State”から象徴的で、情け容赦のない哀しみに慟哭する美メロ推しが今作の肝。
そのため真新しさはあまりないのですが、陰影に富んだギターの美しさが鮮やかに月夜を疾走するM-2“Moonlit Navigation”、絶叫と共に悲嘆に暮れるメロディーに沈むようなM-3“Dream And Memory”、ゆったりと寝台で泣き崩れるような湿ったトレモロが美しくも陰惨なM-4“Chains Of Loss”までの畳み掛ける洪水に溜め息が出そう。
印象的なリフが耳に潜り込みながら曲を牽引しつつも時にスラッシーな刻みを入れたり聴きどころも豊富なM-5“Signal Fires”、90sメロデスを思い出す冷たく美しいギターが耳に残る合間の静寂に木霊するギターソロも艶やかなM-6“The Breaking Point”、悲壮感のあるトレモロの間隙を縫うように美麗なギターが顔を覗かせどんどん曲を華やかに肉付けするM-8“In Desperate Times”と、美しさのある疾走感に特化したアルバム構成が見事。
美麗なギターに合わさるグロウルもリヴァーヴがかかっているようで、非常に雰囲気のある録音でかっこいいですね。
美しい月が照らす宵闇のアートワークも印象的な、非常にメロディーを重視した音楽性は、メロディックブラックやメロディックデスメタルを好きな方なら気に入ると思える一枚。
慟哭し泣き喚くというよりは、しくしくと嘆き悲しむような湿り気が癖になる逸品です。



1. Ouroboric State
2. Moonlit Navigation
3. Dream And Memory
4. Chains Of Loss
5. Signal Fires
6. The Breaking Point ★
7. Wild Magic
8. In Desperate Times
(2020/Gilead Media)
Time/42:01