むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Phoxjaw / Royal Swan

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Phoxjaw / Royal Swan



UKのロックバンドによる初フルレングス。



凄まじく規格外のロックを鳴らすバンドだな、とまず思いました。
彼等の音楽には、ポストブラックやスラッジ、ハードコア染みたものをブリットポップに落とし込むことで雑多でありながら非常に聴きやすくキャッチーなものに昇華しています。
リフの鋭さはハードコアやメタル由来のものでありつつ、全体を包む空気はスタジアムロック然としています。
夢見心地でシューゲイザーのようなインストM-1“Charging Pale Horses”に先導されて緩やかにはじまるM-2“Trophies In The Attic”の怒涛としか言い様のない展開と感情の往き来の激しさは、ちょっと何が起きてるのかわからないほどの混沌を生んでいます。
乱打される反復リフを切り裂く激しく疾走と抑制を繰り返すアンセムM-3“Triple AAA”、ヒステリックなギターと重心を落としたドラムが軋むような緊張感とヘヴィネスを生むM-4“You Don't Drink A Unicorn's Blood”、朗々と歌う裏で奇妙に歪むギターが密やかに疾走するM-5“Half Horse”の怒涛の作品展開に、ギターロック好きの心は鷲掴みにされるはず。
90sブリットポップの空気とロンドンパンクの退廃を怠惰に鳴らすようなM-6“Infinite Badness”や詩情に満ちた響きのギターが物憂げに鳴らされるM-7“Teething”の切ない疾走、重たくとぐろを描くようなグルーヴと天に溶けるようなドリーミーなメロディーが珠玉のM-8“An Owl Is A Cat With Wings”に、彼等の柔らかな部分の芯に触れることができるでしょう。
妖しげなキーボードが艶かしいギターにもたれかかる官能的な色合いを持つM-9“Bats For Bleeding”、ざらついたリフが三半規管を酔わすように絶叫と共に乱高下するM-10“The Monk”、物憂げなギターメロディーが暴れ回ったり開放的なコーラスへと繋いだり予測不能な展開を繰り広げていくM-11“Royal Swan”と、野放図に見える無邪気さと知性を同居させた大傑作です。
マニアックな要素を惜しげもなく入れる貪欲さと、それでいてメインストリームを視野に入れた野心的な佇まいを巧く御しているなかなか素晴らしいデビューアルバムですね。
何だか、Muse辺りが出てきた時のことを思い出すような作品です。
黄金のローブ姿のアーティスト写真もなかなかはったり効いていて素敵ですね。



1. Charging Pale Horse
2. Trophies In The Attic
3. Triple AAA
4. You Don't Drink A Unicorn's Blood
5. Half Horse
6. Infinite Badness
7. Teething ★
8. An Owl Is A Cat With Wings
9. Bats For Bleeding
10. The Monk
11. Royal Swan
(2020/Hassle)
Time/45:04