むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Neck Of The Woods / The Annex Of Ire

f:id:bluecelosia:20200920001730j:plain
Neck Of The Woods / The Annex Of Ire



カナダのプログレッシヴメタルコア/メロディックデスメタルバンドによる2作目フルレングス。



初めて聴きました。
一聴して思ったのはプログレッシヴなメタルコアを軸にスラッジやクラスト等の殺伐とした要素で味付けしながらも、極めてメロディックデスメタルだな、と。
Lamb Of Godへの憧憬をちらつかせつつ、非常に叙情的な要素を前面に押し出しています。
この押し引きのバランスが絶妙で、美麗なギターメロディーが甘くなりすぎるギリギリの線上でスラッジやクラストの乾いた感触を覗かせており、殺傷力を高めています。
さらに嬉しいことに、基本軸の体感速度は速く、爽快感があるんですね。
開幕M-1“The Annex Of Ire”のしっとりとしたギターの美しさに確かな推進力を加えて壮絶なグロウルを轟かせる様は、メロデスと言い切ってしまえるほど。
クラスト由来のぐしゃぐしゃした硬質の爆走に雄々しいグロウルを重ねる暴虐的なM-2“Ambivalence”、奈落に突き落とされる重厚なリフと小気味の良い疾走に頭が揺らされるグルーヴィーかつ複雑なM-3“Skin Your Teeth”、邪悪なメロディーで退廃的な空気を激しいリフの刻みに持たせて気持ち良い疾走に雪崩れ込むM-4“Vision Loser”の後半に聴こえるポストメタルにも通じる残響とギターソロの美しく官能的な絡みに喝采する人は多いでしょう。
一転無骨なリズムにLamb Of Godの影を見せつつ妖しいギターの荘厳な美しさに圧倒されるM-5“Crosshairs Will Shift”、流れるようなリフとハードコアテイストのアジり倒す演奏が熱く滾るM-6“Strange Consolation”、鮮やかに弾き倒されるギターのシュレッドから一気に単音リフのツインリードに雪崩れ込むメロデスを展開するM-7“The Tower”と、実にメロディックな作品に仕上がっています。
メタルコアと言うには明確なブレイクダウンがなく、それっぽいパートでも速度を落とさずギターが乱舞しているのでこの作品はメロデスと言ってしまっていいのではないかと思います。
強靭な演奏に重なるメロディーの指向性も、メタルコアの筋肉質でガチッとした録音ではないため北欧メロデス的な湿り気が全面に出ている、いそうで意外にいないタイプ。
グロウル一本で潔く押していくスタイルながら、器用に歌いこなす相当な実力者な風格もありますね。
思わぬダークホース的な、非常に完成度の高い一枚です。



1. The Annex Of Ire
2. Ambivalence
3. Skin Your Teeth
4. Vision Loser
5. Crosshairs Will Shift
6. Strange Consolation
7. The Tower
(2020/Pelagic Records)
Time/38:17