むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Dzö-nga / Thunder In The Mountains

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Dzö-nga / Thunder In The Mountains


USのアトモスフェリックブラックメタルバンドによる3作目フルレングス。


大自然の移ろいと大いなるうねりを敬意を持って音に込めた作品です。
Dzö-ngaという聞きなれない名前は、魔術師アレイスター・クロウリーが登頂して失敗したネパールの霊峰カンチェンジュンガに住む悪魔からおそらく取られたもの。
そんな禍々しい響きに反して今作の持つ雰囲気は非常に美しく、前作からバンド化した強靭さが大きく花開いています。
カスカディアンブラック勢からも大きく影響を受けた深遠に気が遠くなるような自然崇拝型ブラックはそのままに、華やかなメロディーを交えて更に大仰に拵えており、クリーンな女性Voも華やかに盛り立てるM-1“The Song Of Hiawatha”を聴けばわかるように、ド派手なシンフォニックブラックの装いすら体得しています。
きらびやかな銀盤に悠然とドラムが疾走する月夜の森に溶け込むようなドラマチックなM-2“Heart Of Coal”、一転山火事と嵐が荒れ狂う暴虐的でありつつフォーキッシュで美しいメロディーがぶちまけられるメロディックブラックM-3“Flames In The Sky”、全てが燃え尽きた後の静けさから命が芽吹くような再生へと向かう美しく遠大なM-4“A Soul To Burn”、しんと静けさに満ちた山々の夜を切り取ったギターインストM-5“Starlight,Moonlight,Firelight”、幽玄なトレモロに美しい銀盤がせせらぎのように注ぎ込まれる勇壮なメロディーの隙間から射し込むギターソロが鮮やかなM-6“The Death Of Minnehala”と、非常に高い完成度に仕上がっています。
演奏の押し引きも絶妙で、暴虐と静寂のメリハリも実にいい塩梅で配置されているため、基本的に大作志向の今作でも聴き疲れることがないです。
往年のWintersunに肉薄するとまでは言い過ぎでしょうが、クサメロ大好きな方には割と刺さる傑作ではないでしょうか。
ブラックメタルの邪悪さは希薄ですが、ここまで芳醇な美メロで押し切られると言うことはないですね。


1. The Song Of Hiawatha
2. Heart Of Coal ★
3. Flames In The Sky
4. A Soul To Burn
5. Starlight,Moonlight,Firelight
6. The Death Of Minnehala
(2020/Avantgarde Music)
Time/46:43