むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Kaleikr / Heart Of Lead

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Kaleikr / Heart Of Lead


アイスランドプログレッシヴデスメタル/ブラックメタルバンドによる初フルレングス。


元はDraugsolというバンドで、変名しての作品です。
変名前を含めても彼ら自身初めて聴くので前身と比較はできませんが、第一印象は“凄く優美なDeathspell Omega”でした。
フレンチブラックの影響を受けているのは確実で、乱反射する不協和音で不気味に迫るギターの神経質な感じは、M-1“Beheld At Sunshine”からしっかり脈打っています。
とは言え単なるコピーになっているわけでは当然なく、ポストブラックを通過したと思しきメロディーラインが非常に美しい。
フレンチブラックの宗教的退廃感とかなり合っていて、暴虐的なブラストも随所で顔を出します。
銀盤とストリングスの物悲しくも美しいメロディーが炸裂するM-1“Beheld At Sunshine”の劇場型とも言える構築力は素晴らしく、続く反復するリフの陰鬱さに鬱ブラの因子を感じる暴力性を強く発露させたM-2“The Descent”に彼らの目指す地平が滲み出ています。
緩やかに死んでいくような凍りついたメロディーが美しく広がっていくM-3“”の荒ぶり方や、近年のForgotten Tombを彷彿とさせる神経を障るようなギターが耳を引くM-5“Neurodelirium”の邪悪さは北欧ブラック的でもあって面白い。
ブラックメタルの暴虐性をしっかり残したままメロディーを際立たせている彼らの軸足は表題曲でもあるコンパクトなM-6“Heart Of Lead”からも窺え、かなり緻密に曲を構築していることがわかります。
前曲の暗黒面を多大に引きずったまま聴き手を奈落に引きずり込む威圧的なVoもかっこいいM-7“Eternal Stalemate And A Never-Ending Sunset”の幕引きに、今作がある種のコンセプトを持っていることが窺えます。
夜明けからはじまり、夕暮れに終わりますからね。
なかなか質の高いブラックメタルです。
DsOの影響下にありますが、DsOとは似て非なる個性がある作品です。
クリアな音質なのは素晴らしいですが、少し音圧が弱いプロダクションなのが少々残念かな。
それを差し引いても美しい霧煙る作品ですね。


1. Beheld At Sunshine
2. The Descent
3. On Unbearable Longing
4. Internal Contradiction
5. Neurodelirium
6. Heart Of Lead ★
7. Eternal Stalemate And A Never-Ending Sunset
(2019/Debemur Morti Production)
Time/47:57

Score:8.7/10


Kaleikr - Neurodelirium