むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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I Am Destruction / Nascency

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I Am Destruction / Nascency


USのデスコアバンドによる初フルレングス。


Ingestedにもライヴメンバーとして在籍していたこともあるStephen Mashburnを中心に結成されたバンドです。
数多あるデスコアバンドの中でもDespised Iconに近いスタイルを信条としていて、よりCannibal CorpseやDying Fetusといったデスメタルの質感に近い作品に仕上がっています。
モダンな要素をあまり表に出さず、乾いた殺伐とした録音で猟奇的な空気を演出することに成功しています。
スプラッタ映画のシーンをサンプリングした拷問が痛々しいSE×ギターによるブレイクダウンM-1“Primo Incism”を抜ければ、加虐的に執拗に鋸のようなリフが擂り潰してくるM-2“Propagated By Abnormality”、グルグルとリフが聴き手を引きずり回し鋭いドラムが拝めるM-3“Ruinous Phantasm”、厳つい咆哮と喚き散らす叫びの掛け合いと重たいリフがのたうち回るM-4“Burgeoning Adversary”まで息を吐かせないほど暴れ回る序盤に息苦しさを覚えるほど。
じっくりと溜めるようなBPMに血腥いブレイクダウンで徹底的に叩き落として艶かしいソロを挟むM-5“Divine Infestation”やスラムデスにも若干接近しつつ咽を詰まらせるようなリフが拝めるM-6“Consequent Forfeiture”、丁寧にリフを重ねて猟奇的な空気と呪術的な雰囲気を織り交ぜるM-8“Gehenna's Beckoning”、乱打されるドラムの苛烈さと鮮血を散らすようなチェーンソー染みたリフが最期まで執拗に刻んでくるM-10“Nascency”と、シンプルながらも複雑に入り組んだ展開が素晴らしい作品です。
ミキシングのバランスも良くて、明瞭ながらもしっかりとデスメタル的な凶暴さを削がない録音で、変に分厚くないソリッドな音響も自分好みでした。
爆走はしないですが、体感速度はなかなか速いです。
不潔や不浄を意味するアルバムタイトルにも負けないSICKな作品。
デスコアでもこういう音響で聴かせるのは案外少ない気がするので、デスメタルが好きな方ほど違和感なく聴けるのではないでしょうか。



1. Primo Incism
2. Propagated By Abnormality
3. Ruinous Phantasm
4. Burgeoning Adversary
5. Divine Infestation ★
6. Consequent Forfeiture
7. Existence In Decay
8. Gehenna's Beckoning
9. Dolor Perdition
10. Nascency
(2020/Unique Leader)
Time/36:15