むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Soccer Mommy / color theory

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Soccer Mommy / color theory


USのシンガー/ソングライターによる2作目フルレングス。


彼女のことは全く詳しくなく、デビュー作である前作も聴いていませんが、予想以上にロックバンド然としたオルタナティブロックをやっていて驚きました。
イメージ的にはJulien Bakerのようなより朴訥としたギター弾き語りに近いスタイルだと思い込んでいたので。
勿論、そういったシンプルな曲もありますが、Nirvanaや中期Sonic Youthを彷彿とさせるメロディーラインから爆発する甘やかな轟音がうっすら立ち上るM-1“bloodstream”の気持ち良さが、単純にギターロックとしての楽しさを提供しているようにも映ります。
ひねったポップスのメロディーを物憂げな声色で伸びやかに歌い上げるM-2“circle the drain”、あっさりとした弾き語りかと思いきや甘いノイズを織り混ぜつつ夢見心地なタッチのギターを聴かせるM-3“royal screw up”、美しく流れるようなギターとフィールドレコーディングしたかのようなサンプリングの上を優しい歌声が泳ぐM-4“night swimming”、仄かにノイジーなギターと力強いドラムに合わせてジョグするようなM-5“crawling in my skin”までに貫かれる彼女の澄んだ音世界にやりたいことがうっすら見えます。
淡々としつつも美しいギターノイズをゆらりとくゆらせるサイケデリックなM-6“yellow is the color of her eyes”に見える審美眼的な感性や、透徹したまま力強い躍動感を曲に与えるギターの唸りが印象的なM-8“lucy”の神経に障るような甘い響き、攪拌していくような残響が真夜中の微睡みを表現するようなM-10“gray light”の終盤の仕掛けなど、地味に映るような作風でも垣間見ることのできる彼女の飽くなき探求心は、案外この世代の人たちの中でも一歩抜きん出ている気がします。
その音の面白さが、意外に素直なメロディーに加味されて躍動的なポップスの感覚をギターロックに与えている辺り、更なる進化と深化の兆しが窺える逸品。
ドリームポップとしての微睡みの快感もしっかりあるのは系統の近い作風であるSnail Mailともだいぶ異なる質感ですね。


1. bloodstream
2. circle the drain
3. royal screw up
4. night swimming
5. crawling in my skin
6. yellow is the color of her eyes ★
7. up the wall
8. lucy
9. stain
10. gray light
(2020/Loma Vista
Time/44:08