むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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The Strokes / The New Abnormal

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The Strokes / The New Abnormal


USのロックバンドによる6作目フルレングス。


新世代のロックンロールバンドと持て囃されて早20年近くが経ち、彼等もベテランバンドの領域。
寡作と言うほどでないにしろスパンもそんなに短くもないのでリリースの度にトピックになるものの、今作も大きな路線転換はなく、ざっくりとした肌触りでは“いつものストロークス”の作品となっています。
とは言え、前作が衝動的な意味として原点回帰&集大成となっていたので、今作はそれを超えて吹っ切れたような作風となっています。
M-1“The Adults Are Talking”こそ1st期を彷彿とさせる力の抜けたスタイリッシュなロックンロールですが、全体的に若々しい躍動感が加味されているので非常に聴きやすいです。
夢見心地たっぷりなギターとまどろむようなVoが脳髄を蕩けさせるM-2“Selfless”、一転して醒めるようなつんざくギターと跳ねるリズムが印象的なM-3“Brooklyn Bridge To Chorus”の冒頭から掴む構成なのは流石の貫禄。
なだらかかつ爽快に聴かせるギターの上で張り上げる歌の魔力が鮮烈なM-4“Bad Decisions”、従来の彼等にはありそうでなかった照りつける陽光を思わせるチルアウトポップM-5“Eternal Summer”、癖になるリフがぐずぐずに崩れていきノンビートのEDMが如く漂うM-6“At The Door”の中盤の新味には驚く人も多いのでは。
明瞭なスネアの小気味良さにロマンチックなギターを合わせる彼等らしいM-7“Why Are Sunday's So Depressing”、更に感情を物憂げに寄せるギターの音色に呟くように歌われる彼等なりのブルースを構築している趣のあるM-8“Not The Same Anyone”、蠢くようなエレクトロに寂しげなムーグを這わせて何とも言えない郷愁を呼び起こすM-9“Ode To The Mets”に至るまで、完成度と言う意味では過去最高と言っていい仕上がり。
個人的に彼等の音楽に求めるのは、革新的な音を革新的に聴かせるものではなく、ノスタルジックなものをスタイリッシュに聴かせることに革新性を見出す類のものなので、今作にもそれがしっかり息づいていて嬉しい作品でした。
彼等のファンには外さない作品なので、肩肘張らずに聴けますよ。


1. The Adults Are Talking
2. Selfless
3. Brooklyn Bridge To Chorus
4. Bad Decisions
5. Eternal Summer
6. At The Door
7. Why Are Sunday's So Depressing
8. Not The Same Anyone ★
9. Ode To The Mets
(2020/RCA
Time/45:07