むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Jon Bryant / Cult Classic

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Jon Bryant / Cult Classic


カナダのシンガー/ソングライターによる4作目フルレングス。


蕩けるようなサウンドスケープと天に溶けていくような美しいファルセットで歌われるのは、カルト宗教について。
今作のコンセプトは、自身が参加していたアメリカの自助グループNXIVMでの経験を吐露し、それに基づき構築したもの。
そのため、先行カットされた70年代ソフトロックのフィーリングを持つM-3“Cultivated”のPVでは何枚も宗教儀礼のカットが挿入されています。
そういった背景を抜いても、今作はM-1“Paradise”を聴けばわかるように、現実感に乏しいメロディーをしっとり聴かせるソフトロックとモータウンの要素を取り入れたドリームポップであり、彼の美しく憂いを帯びた歌声を中心に据えた作品です。
フォーキーなギターとダイナミックなドラムで聴かせるM-2“5 Years”、立ち昇る幽玄の美メロが歌に寄り添うフォークトロニカ的な味わいを持つM-4“Superstition”、歯切れのいいリズムでポップなメロディーラインを際立たせるM-6“Ya Ya Ya Ya”、丁寧に爪弾かれるアルペジオの残響が現実感を喪失させるM-8“Party”、スムージーな音運びで仄かに翳りのある歌を聴かせるM-10“Don't Cover Up”と、彼の歌声に引き込まれる作品に仕上がっています。
朴訥とした作品ではあれど非常に洗練されており、独特な聴き心地を与えてくれます。
今作はNXIVMを脱会した後に作られた作品なので、カルト教団に対しての冷徹な目線もあったりします。
ただ宗教に対して否定的な作品でもなく、今作はあくまで人間の繋がりを求める力の強さと、人の弱さを受け入れる愛が歌われた作品です。


1. Paradise
2. 5 Years
3. Cultivated
4. Superstition ★
5. The Fall
6. Ya Ya Ya Ya
7. Did What I Did
8. Party
9. At Home
10. Don't Cover Up
11. Out Of The Blue
(2019/Nettwerk)
Time/44:13