むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Bullet For My Valentine / Gravity

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Bullet For My Valentine / Gravity


UKのメタル/オルタナティヴロックバンドによる6作目フルレングス。


BFMV史上、最も賛否分かれるであろう問題作です。
前々作“Temper Temper”以上に炎上していますが、その理由は前作“Venom”でファンの喝采を呼んだ攻撃的でメタリックな部分をほぼ封印してしまったことによるもの。
鮮やかなギターメロディーやギターソロによる叙情を廃した代わりに、先行カットされたM-2“Over It”のようにエレクトロによるアンビエンスを大々的に押し出し、それによる空間演出と浮遊感でメランコリックでメロディアスな側面をこれまでになく強調したこと、これがファンの中でも議論を呼び込むことになったりもしています。
その路線転換それ自体は問題ではないと思っています。元来このバンドは叙情的なメタル路線一本でやってきたわけではないので、個人的に今回特に驚きはありませんでした。Triviumも似たようなことやりましたしね。
ただ今回最大のウィークポイントは、バンド感の大きな減退、それに尽きると思います。
今作はそもそもフロントマンMatt Tuckの思い描く音像を最大限引き立てるためにほぼ独裁体制で作ったようで、ドラム以外はMatt1人で制作しているみたいです。
そのためか、これまでになく物憂げで、M-1“Leap Of Faith”から象徴しているほどポップ寄りです。
跳ね回るようなリズムアプローチが印象的な前述のM-2“Over It”はDjentというよりはエレクトロからの影響が大きいですし、EDMに近い浮遊感がメランコリックなメロディーと絡み合って炸裂するエモいM-3“Letting You Go”の序盤で今までのBFMVファンは篩にかけられる仕様。
中核にはまるでAviciへの鎮魂歌にも聴こえる溶け入りそうなバラードM-9“Coma”も鎮座しています。
勿論従来型BMFVが堪能できるアグレッシブなM-10“Don't Need You”やボートラながらも本編よりも激しくリフを掻き鳴らすM-13“Crawling”といった曲もありますが、ここに行き着くまでに力尽きる人もいそうなのが勿体ない。
ただ、個人的には滴り落ちる水滴のような繊細なメロディーが美しく合間のギターリフが胸を掻き毟るようなM-7“Under Again”や、驚くほどポップな感性を響かせるM-8“Gravity”の新機軸が好きなので、今後の作品への昇華にも期待しています。
とは言え、メタルアルバムとしては聴くのは難しい作品ではありますが、ロックアルバムとしては新たな層も獲得できそうな作品になっていると思います。
Mattのソロでやってほしかったという意見も聞こえてくるのも理解できる作品ですけども。


1. Leap Of Faith
2. Over It
3. Letting You Go
4. Not Dead Yet
5. The Very Last Time
6. Piece Of Me
7. Under Again ★
8. Gravity
9. Coma
10. Don't Need You
11. Breathe Underwater
12. Breaking Out
13. Crawling
(2018/Spinefarm)
Time/49:07
M-12,13限定盤ボーナストラック。