むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Lynch. / XIII

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Lynch. / XIII


日本のロックバンドによる10作目フルレングス。


ベースの明徳に関するゴタゴタが一段落しての初フルレングスになります。
前EPも実質フルレングスみたいなものですけど。
Lynch.の売りであるスピーディーな楽曲展開によるスポーティーな激音という骨格は不変ですが、兆しのあったクリーンの大幅な増強とギターソロの増加、つまるところ“メロディーを聴かせる”ということに完全にシフトしています。
それらを演出するのが、90年代V系ラウドロックを現代に蘇らせた、メンバーのルーツをかなり露骨にさらけ出したもの。
“The Avoided Sun”“Inferiority Complex”“Gallows”辺りは独自性を出そうともがいていたのか、生みの苦しみがわかる熱量が伝わってきましたが、今作はそういう熱はあまり感じず、とは言え波に乗ろうとしている勢いは復活した気がします。
加えて目に見えて良くなっているのがベースで、以前のようなガツガツ前に出てくるのは控え目になりましたが、ここぞとピンポイントに聴かせる魅力が増えています。
激烈ではない8ビートのリズムに強靭なグルーヴで疾走するM-2“Thirteen”、アルバム“Gallows”をまるごと再構築した感覚のM-4“Exist”といった曲は掴む力があります。
ですが、ちょっとやりすぎなくらい引用しまくっているM-5“Joker”やM-11“Faith”は人によっては拒否反応を示すかも知れません。清春関連やBuck-Tick辺りが過る“Joker”のMarilyn Manson“Beautiful People”まんまのリフがハイライトに使われていたり、“Faith”では黒夢“親愛なるDEATHMASK”のメロディーを引用していたり、とにかくわかりやすいのが微笑ましいと取るか鼻につくかで評価は真っ二つに分かれると思います。私はどちらか言えば後者寄りですかね。
個人的には、今作では聴かせるタイプの曲のメロディーの良さがまずまず気に入りました。
流れるようなメロディーが叙情的に映えるM-6“Renatas”やLUNA SEA愛を露出しているけど丁寧に作られたM-7“Amble”、リフにしろ歌詞にしろ反復させて乱反射していくバラードM-13“A Fool”といった曲は素直に入ってきました。
ただ以前からずっとこういうことはやっているので、スムーズに聴かせる音の強度と完成度に反して、偉大なるマンネリズムに支配されている感は払拭できていません。
それなりに名のある位置にあるバンドなので、もっと独自性があって尖った作品が聴きたいというのは本音としてあります。
メジャーの宿命かも知れませんけど、やっぱりスパン短すぎる気がするんですよね、“Gallows”以降。


1. Introduction
2. Thirteen
3. Grotesque
4. Exist ★
5. Joker
6. Renatas
7. Amble
8. Sense Of Emptiness
9. Five
10. Interlude
11. Faith
12. Obvious
13. A Fool
(2018/King)
Time/48:34

Score:8.0/10


JØKER / lynch.