MØL / Jord
デンマークのポストブラック/ブラックゲイズ/ブラックメタルバンドによる初フルレングス。
Alcest、Deafheavenらポストブラックの中でも特に“ブラックゲイズ”と称されるサブジャンルの、個人的にはそのままのスタイルを体現するバンドです。
ブラックメタルの強度と攻撃性を、そのままシューゲイザーと折衷しています。
Alcestほど幻想的な繊細さに特化しているわけでなく、Deafheavenほど闇雲なブラックメタルで突っ走るでもなく、両者の丁度中間地点辺りに腰を下ろしているいい塩梅。
天へ昇るかのような清廉なメロディーが特徴的なM-1“Storm”は今作をそのまま表す理想的なオープナーです。
基本的にVoはブラックメタルらしいがなり声とグロウルを使い分けるスタイルです。
華やかに匂い立つようなポストロック/インディーロックを彷彿とさせる青春メロディーが立ち上るM-2“Penumbra”や、太陽光の余りの眩しさに生物が死に耐えたかのようなブラックメタルの苛烈さとSonic Youthが蜜月を交わした印象のM-3“Bruma”、起伏を織り交ぜ鋭くトレモロリフが突き刺すM-4“Vakuum”の前半はメタルの強度とエモいメロディーの融合が目立ちます。
空気を変えるのは、まさに90年代インディーロック/エモの青い叙情を立ち上らせたインストM-5“Lambda”で、何だかMogwaiとかTNT辺りを聴いている錯覚に陥るほど。
それを断ち切るような重心の低さと重たいリフの隙間から光が差し込むブラックメタルM-6“Ligament”、輪郭のはっきりしたリフ捌きと重厚なグルーヴに身体を揺らせるM-7“Virga”、幽玄のメロディーを揺らめかせながら心地好いベースが這い回りジャジーなブレイクも酒脱なM-8“Jord”で幕を下ろす構成も素晴らしい。
トリッキーなことに頼らず、単純に楽曲の強度を極限まで高め、結果としてポストブラックの極点に初作で辿り着いたような感覚を覚えました。
ええ、この作品はとても強いです。そして現実感を喪失させるほど、凄まじく美しい。
1. Storm
2. Penumbra
3. Bruma ★
4. Vakuum
5. Lambda
6. Ligament
7. Virga
8. Jord
(2018/Holy Rore)
Time/41:38