むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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August Burns Red / Guardians

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August Burns Red / Guardians



USのメタルコアバンドによる8作目フルレングス。


みんな大好きメタルコアの雄ABRです。
本邦でも確固たるファンベースを築いているメタルコアの重鎮たる彼らの新作ですが、かなり思い切った作風にシフトしている印象を受けました。
ABRと言えば、しなやかな瞬発力で矢継ぎ早に様々な展開を盛り込み、かなり忙しい演奏を破綻なく聴かせることに定評があり、その上で抜群のメロディーセンスが楽曲を支配するスタイルです。
事実、前作“Phantom Anthem”はそのABRらしさを存分に発揮した傑作です。
そして今作ですが、良く言えば落ち着いてじっくり聴かせる、悪く言えば大人しい作品になっています。
これはその忙しない展開を幾分減らしてその分メロディーを丁寧に聴かせることに重きを置いた印象で、バンドの攻撃性が衰えたことでないことは、幕開けを飾る咆哮と共に衝動的にリフを刻みつつ疾走するM-1“The Narrative”を聴けばわかるはず。
重心を落としたリフの刻みからブレイクに叩き落として爽やかなコーラスに導くM-2“Bones”、壮大に渦を描くようなギターにブレイクダウンを執拗に設けて混沌を産み出すM-3“Paramount”、重苦しいリフと怒号轟く暗黒的なヴァースを聴かせる新境地的なM-4“Defender”と、ABRとしては割とスロースターターな印象は実際あります。
開放的なコーラスと共にぶち上げながら疾走とブレイクを繰り返す叙情的なM-5“Lighthouse”、明るめのメロディーを全面に押し出し闇雲に爆走するM-6“Dismemered Memory”、哀愁的なギターで緩やかに天へと昇るようなM-7“Ties That Bind”まで辿り着く頃には、いつものABRらしさは強まっています。
耳を引くギターをゆったり聴かせたかと思えばかなり忙しない展開で爆走と疾走を切り替えるM-9“Extinct By Instinct”、慟哭で天へと咆哮するような哀しげなメロディーが胸に迫るM-10“Empty Heaven”といった曲では、メロデス由来のメタルコアをばっちり聴かせてくれるので、何だかんだと満足感はありました。
この変化は成熟と言うよりは実験的と言ってもいいのですが、彼らの紡ぐメロディーを一本化してもきっちりABRらしい作品に仕上げるのは流石の貫禄ですね。
一聴してダークと言われるのも納得の作品ですが、今作が出た時期の世界的な混乱を思えば、何となく予見的な作品になっているのが興味深いですね。



1. The Narrative
2. Bones
3. Paramount
4. Defender
5. Lighthouse
6. Dismemered Memory
7. Ties That Bind
8. Bloodletter
9. Extinct By Instinct ★
10. Empty Heaven
11. Three Fountains
(2020/Fearless)
Time/49:27