むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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【インタビュー】ARALLU


イスラエルの結成25年のベテラン、ブラッケンド・デスメタルARALLUにインタビューを敢行しました。
答えてくれたのは、バンドの中心人物であるButcheredです。



Q.新しいアルバム『Death Covenant』、非常に良かったです。ファンやメディアの反応はどうでしたか?

A:
聖地から失礼するよ。俺は、ARALLUのメインメンバーButcheredだ。まず最初に、インタビューに敬意を。ありがとう。
ARALLUの多くのファンは、俺たちの新しいアルバムをとても気に入ってくれているよ。俺たちのページにはたくさんの称賛のメッセージが集まっていて、彼らを失望させなかったということがわかってとても嬉しいよ。
自分たちがやっていることには自信を持っているし、ファンがこのアルバムを気に入ってくれることはわかっていたが、新しい人々が俺たちのスタイルを見つけて楽しんでくれることは本当に素晴らしいことだ。



Q.『Death Covenant』は、『En Olam』をより暴虐的に発展した印象を受けました。『Death Covenant』はどういった世界観を提示していますか?

A:
ARALLUは非常に明確な個性を持っている。俺たちは中東の音楽の影響を受けたブラックメタルを演奏しているが、そのベースはアルバムごとに異なる場所に連れていくのさ。スラッシュメタルの影響を受けたアルバムもあれば、デスメタルの影響を受けたアルバムもある。
つまり、これがARALLUであり、1997年に始めた音楽路線に忠実であることは常にわかるな。
とはいえ、俺たちの音楽は常に新しいことを試しているし、曲によって、レコードによって、創造性を発揮する余地がたくさんある。さっきも言ったように、我々のアルバムはどれもそれぞれ違うが、どれもARALLUらしさが出ている。それがメタルの素晴らしいところだと思う。
俺は、定石を見つけてそれに固執しているバンドよりも、Mayhemのように常に自分自身を拡張し、新しいことに挑戦しているバンドの方が好きだからな。ARALLUのすべてのアルバムは基本的にコンセプト・アルバムだ。少し不気味で、時間が経つにつれて、むしろ非現実的だと思われていたことが、世の中で起こってしまったということを書くのが常だよ。
例えば、2枚目のアルバム『Satanic War In Jerusalem』は、イスラム過激派の台頭と西欧諸国での戦争がテーマになっていて、それはエルサレムから始まって世界中に広がっていく...と思われていたら、突然エルサレムでテロ行為が起こり始め、そこから9・11でアメリカに、さらにヨーロッパに広がっていっただろ。
『En Olam』は、すべてが幻想であり、その背後にある世界そのものが麻痺しているというものなんだ...。そしてCOVID-19が蔓延し、我々が以前から知っていた世界はもう存在しない。
2015年までさかのぼると『GENIEWAR(2015年リリースの5作目)』のアルバムのコンセプトは、イスラエルの戦争、イギリスの委任統治時代から暴力的なテロ集団、そして突然のISISの台頭だった。アルバムごとに新しいことをやっていきたいと思っているんだ。
俺たちはバンドとして自分たちを繰り返したくないんだ。スタイルはいつも同じで、すぐにARALLUだとわかるだろうが、アルバムごとに同じことをするのは意味がない。
今回は『Death Covenant』を中心に、戦争ではなく、神秘主義や超自然的なものにしたかった。魔法とでも言うのかな。このアルバムは、まさにその通りだ。



Q.『Death Covenant』は、サズ(中東の民族楽器)の音色がよりクリアに聴こえます。本作のプロダクションのこだわりはありますか?

A:
我々のアルバムはすべてARALLUのアルバムであり、すべて異なっていて、すべて似ている。
自分たちの故郷の音をエクストリーム・メタル・ミュージックに取り入れるという指針は常に同じで、その道を歩むための新しい方法を模索し続けているが、それはすべて有機的に起こることだよ。それは、もし君が会話をしているとしたら、異なる人に異なる方法で異なることを言うかもしれないし、何度も同じ会話をしたいとは思わないが、君はいつも君であるのと同じことなんだ。
ミックスエンジニア(Dory Bar-Or)は、『Desert Battles』『Geniewar』『Six』『En Olam』という4つの前作と同様に『Death Covenant』のミックスを行っている。彼はどのアルバムでも、俺たちが目指している音や雰囲気をうまく表現してくれていて、まるでバンドの5人目のメンバーであるかのような錯覚を覚えるほどなんだ。



Q.ドラムがRichard Zwaigoftに代わって、はじめてのアルバムですが、感触はどうですか?彼のドラムは非常にタイトな印象です。

A:
ARALLUはとてもアクティブなバンドだ。俺たちは非常に高いオペレーションのテンポを持ち、いつでも誰もが楽しめるというわけではないよ。新メンバーのオーディションでは、技術的に問題ないことを確認した後、スケジュールと目標を説明する。魅力的で華やかに聞こえるが、簡単なことではない。 Richardは『En Olam』のアルバムがリリースされるとすぐにバンドに加わったんだ。 彼はスタジオでの準備のために熱心で、『Death Covenant』でそれをはっきりと聴くことができる。
リハーサルは激しく、レコーディングやツアーもあり、オーディションの時点ではほとんどの人が可能かどうかわからないような投資が必要だ。そういう場合、個人的な目標をいくつか達成した後、2〜3年で疲れてしまうことが多いから、バンドとして維持するために新しい血と力を求めている。
『Death Covenant』のレコーディングを終え、安定したラインナップになり、ノルウェーで2回公演を行ったが、自分たちのサウンドを他の国へ持っていくのが待ち遠しいね。


Q.Aralluは1997年結成と、長い歴史を持っているバンドです。そして、イスラエルで活動し続けているメタルバンドというのは珍しいですよね。結成の経緯を、メタルとの出会いを含めて教えてください。

A:
そう、我々はしばらく前から活動しているが、時間が経つにつれて、より多くのファンに支持され始めているようで、とても感謝している。俺たちはどこにいたかというと、もちろん、ここさ!
だが、真面目な話、97年以降、状況は大きく変わった。実際、俺たちはこれまでに8枚のスタジオ・アルバムと3枚のライブDVDをリリースし、ヨーロッパを中心に多くのショーを行ってきた。
ARALLUは、90年代のエルサレム旧市街を中心とした宗教間の紛争のさなか、97年にエルサレムで結成した。恐怖に取り囲まれながら生きていると、この終わりのない争いのために成長し、望むと望まざるとにかかわらず、何をするにも刺激になる。



通学中のエルサレムの街中で、隣でバスが爆発していたのを覚えている。俺たちは毎日、テレビのニュースを通して憎しみがやってくるのを見た。俺は16歳で、ヨーロッパでのエクストリームブラックメタルのコンセプトとエルサレムでの流血が混ざり合い、ARALLUが誕生した。
長年にわたり、周囲にあった中東の音楽と、10代の頃に聴きはじめたメタル・ミュージックを組み合わせてきた。
90年代にヨーロッパのブラックメタルの波に触れた時、Emperor、SatyriconやMayhemなど、アメリカのスラッシュメタルとは全く異なるサウンドに驚かされた。スピーカーからは冬と雪が感じられ、「雪で覆われた高い木々が見える!」と思ったのを覚えているよ。「こんな風に演奏したい!」とかね。また、彼らの歴史や宗教、戦争についての歌詞もとても魅力的だった。
そして、「ちくしょう、俺は中近東から来たんだ!」と自分に言い聞かせた。俺たちの土地の歴史は、戦争と勇気の物語で満ちている。第一次インティファーダ(*イスラエル創立で追放されたパレスチナ人の対イスラエル抵抗運動)が始まり、自爆テロがバスやレストラン、さらには路上でほぼ毎日のように爆発し、何百人もの人が死に、何千人もの人が傷つき、心に傷を負ったことを覚えている。
それは、アルバム『SIX』にある「Oiled Machine of Hate」の新しいビデオクリップにとてもよく表れているな。エルサレムの街は、宗教、非宗教を問わず、人々の血で満たされている。イスラム教徒とユダヤ教徒キリスト教徒とイスラム教徒など、国中で宗教戦争が起こり、その連鎖は終わらなかった。この映像はすべて本物だ。テレビのニュースでは、体の一部や人々の叫び声、焼け落ちたバスなど、恐ろしい写真で埋め尽くされていた。ファースト・アルバムの歌詞を書くことが俺の対処法だったんだ。ほとんど自分で書いたようなものだった。
それに伴い、父が日夜聴いていた音楽は、中東一帯のものだった。トルコ、イスラエル、エジプトまで。東洋のリズムとギターを、俺が大好きなノルウェーブラックメタルのブラストビートとシュレッダーにどう組み合わせたらいいのか、一生懸命考えていたよ。しばらく時間がかかったけど、最終的に最初のデモを出したらとてもよく受け入れられて、イスラエル中の人々に衝撃を与えたよ。



ARALLU (Israel) - Oiled Machine Of Hate OFFICIAL VIDEO (Folk Black/Thrash/Death Metal) - YouTube
※ショッキングな映像なので、注意してご覧になってください。



Q.Aralluという名前は、どのような意味で名付けましたか?メソポタミア神話に関連しているというのは調べましたが、詳しくはわからなくて。

A:
女神エレシュキガルと神ネルガルが治める冥界の王国の名前で、死者が裁かれる場所であることからARALLUと名付けている。
ARALLUの音楽は、同胞の伝統的な古代中東のメロディー、AngelcorpseやAbsuのような高速の野蛮なバンド、先に述べたAbsuのような伝説的なバンドの雰囲気的な感触を中心に展開している。
本当に長い話なのだが、いくつかポイントを挙げてみる。昔、中東のあたりはオスマン帝国だった。ほとんど今日のヨーロッパのようなものだな。国境はなく、一つの大きな国。メソポタミアでは、中東全域を一つの支配者が取り囲んでいた。その中心地がエルサレムだよ。俺たちはエルサレムに住んでいる。
古代から今日に至るまで、宗教の対立の中心地。
ARALLUの音楽と歌詞はすべてこの地域とその歴史について語っている。
残念ながら、我々は地平線の向こうに虹を見ることができない...。俺は戦争の真っ只中に生まれ、おそらく戦争がまだ現実であるときに死ぬだろう。



Q.Aralluはサズをメタルに組み込む唯一無二のスタイルです。この楽器をブラックメタルデスメタルに合わせる発想はどのように生まれたのでしょうか?

A:
誰かが既にやっていることをやるのはとても簡単なことで、ジャーマンスラッシュメタルの波やノルウェーブラックメタルの波で既に見てきた。
ARALLUを始めたとき、たくさんのバンドが同じような音を出していて、それは俺がなりたかったものとは違う。(やりたかったのは)SWONBM(Second Wave Of Norwegian Black Metal)のように、ブラックメタルを取り入れ、北欧の寒さや伝説の代わりに中東の砂漠やメソポタミア神秘主義について歌うというものだった。
『Death Covenant』では、氷のような音を出すギターの代わりに、まったく別のサウンドが使われている。ほとんどの曲はサズで書かれていて、ギターは中近東の音階でバッキングしている。このサウンドは、精神的には愛するブラックメタルの波とよく似ているんだが、実はまったく異なっている。だからこそ、見慣れたものと新しいもの、予想外のものが組み合わさっているように感じられるのだと思う。
我々にとっては、すべてがとても自然なことだ。アルバムごとに新しいものをもたらしたいと思っている。バンドとして自分たちのことを繰り返したくないからな。スタイルはいつも同じで、すぐにARALLUだとわかるが、アルバムごとに同じことをやっても意味がないだろ。
今回は『Death Covenant』を中心に、戦争ではなく、神秘主義や超自然的なものにしたかった。魔法とでも言うのかな。このアルバムは、まさにその通りだ。
(最後の行は前述と同じ回答でした)

Q.イスラエルでメタルを演奏することに困難なことはありますか?特に、あなたたちの結成当初はさらに難しい時代だったとお聞きしますが。

A:
一番オーソドックスというか、自分たちの芸術に対してどうこうというのは...見たことがないな。ライヴの厳しい現実は、本当に大切なものを浮き彫りにしてくれるんだ、わかるだろ?全国でライヴをしたり、ビデオを撮ったりすると、ほとんどの人が「かっこいい」と思ってくれるんだ。
「Subordinates of the Devil」(『SIX』アルバムからのシングル)のミュージックビデオを撮影した時、エルサレムでルシファーのような仮面を被った人と聖なる場所を回ったんだ。一緒に写真を撮りたいと言われることもあったよ。一般的に、内陸部に住む人々は、君が思っているよりもずっと寛容であるように思う。



Q.イスラエルのメタルシーンはどのようなコミュニティなのでしょうか?

A:
エルサレムのシーンとテルアビブのシーンは、その通り、今よりも90年代はもっと違っていた。
エルサレムのシーンは、エルサレムの一般的な生活の厳しさ、つまりテロ行為、高い緊張状態、さまざまな人々が共存していないこと(特に旧市街周辺)と共に生きており、それは生活の基本から来る非常に強い緊張につながり、テルアビブのシーンにはない、はるかにリラックスした冷静さをもたらす。芸術は人生を模倣するものだと思うからな。



Q.あなたの好きな、影響を受けた音楽アルバムやバンドを教えてください。

A:
Slayerは大好きなバンドだな。Mayhem、Absu、Marduk、King Diamond、昔のDeicide、Celtic Frost、Bathory、その他多くのバンドに影響を受けている。



ARALLUのファンや、これからARALLUを知る人にメッセージを下さい。

実際、世界中のファンやメディアから多くのメッセージやインタビュー、レビューをもらったが、日本からは全く届かなかった。なぜ日本人は俺たちのスタイルが好きではないのだろう?
日本のメタルブログにインタビューを依頼したのも、日本からメッセージをもらったのも今回が初めてなんだ。俺たちの一番の夢は、日本でARALLUでプレイすることだ。このインタビューの後、それが実現することを本当に願っている。そして、近いうちに君たちの近くで演奏できることを願っている。



ARALLU:
1997年、エルサレムでButcheredを中心に結成。1999年『The War on the Wailing Wall』でアルバムデビュー。以降、メンバーチェンジを繰り返しながらも、リリースを重ね、2022年に最新アルバム『Death Covenant』をリリース。
デスメタルスラッシュメタルブラックメタルをベースに中東の民族楽器サズやダラブッカなどを組み込む、唯一無二のスタイルで25年イスラエルアンダーグラウンドシーンに君臨し続けている。
現在のラインナップは、
Butchered(ベース/Vo)、Eylon Bart(サズ/ダラブッカ/Vo)、Richard Zwaigoft(ドラム)、Ofek "Omnius" Noy(ギター)


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