むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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A Light In The Dark / Insomnia

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A Light In The Dark / Insomnia


ロシアのポストブラックメタルバンドによる5作目フルレングス。



SkyforestのB.M.氏による別名義バンドで、前作辺りからSkyforestと完全に切り離された音楽性。
Skyforestがペイガン寄りの土着的な側面やクラシカルな一面を見せる一方、このA Light In The Darkはより都会的でシネマティックな方向性で聴かせます。
かと言ってかけ離れた違いはなく、どちらも幻想的なのは共通しており、例えるならSkyforestはよりAlcestに近く、A Light In The DarkはよりLantlosやAmesoeursに近いです。
常磐線の車内アナウンスで話題になったM-1“Aimless”からして、電車に揺られるようなドラムと異邦の地へ誘われる幻想的なトレモロが吹き荒れていますし、真夜中の街並みが夜景として眼前に現れそうな仄かに優しいメロディータッチが耳を引くM-2“Let It Guide You”でグッと心が穏やかになれる作風に仕上がっています。
可愛らしく牧歌的なフレーズに眩いトレモロが被さり絶叫が迸るM-3“Vortex”、雰囲気をがらっと変えた明るいエレクトロポップで神田から東京へ抜けるM-4“四”、神々しく光輝くようなメロディーをトレモロで掻き鳴らしながら切なさを放射するM-5“Insomnia”、緩やかに沈み込みながら絶叫が広がる病んだ空気のあるM-6“Fragments”から繋がるように淡くも劇的な美しさを放つじっくりと展開していくM-7“On My Own”でようやく一区切りつけるような芳醇さ。
ほの暗いリフで歯切れのいいリズムと気持ち良いベースがドライブするM-8“Her Footprints In The Snow”の現実感を消失させる幻想的な美しさがゆっくり現実へ戻っていく構成は見事でした。
絶叫Vo+トレモロブラックメタルとしての体裁は保っていますが、限りなく境界線をぼやかしているので、ポストロックやシューゲイザー好きな人にもオススメ。
Skyforestとは異なる、淡い浮世離れしつつも都会的なポストブラックはなかなか中毒性がある逸品ですよ。


1. Aimless ★
2. Let It Guide You
3. Vortex
4. 四
5. Insomnia
6. Fragments
7. On My Own
8. Her Footprints In The Snow
(2020/Flowing Downward)
Time/46:12