むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Sylvaine / Nova


Sylvaine / Nova


ノルウェーのポストブラックメタル/ポストメタルによる4作目フルレングス。



Alcestの流れを汲む才媛の作品も早くも4作目になります。
『Atoms Aligned, Coming Undone』や『Wistful』にドラムやベースで参加していたAlcestのNeigeは今作には参加していません。
ライヴメンバーでもあるDorian Mansiauxがセッションドラマーとして参加しています。
近年の作品を踏襲し、作を重ねる毎に攻撃性を増すスタイルも健在。ただ、本作におけるアグレッションはより機能的に配置され、彼女の世界観の深遠さをより際立たせる役割にピタリと嵌っています。そのため、要所要所に激烈な凶暴さを漂わせており、Alcestの『Écailles de lune』にも通じる寂寞としたメランコリックなブラックメタルを下地に敷いています。
個人的に本作の肝に感じたのは「声」そのもの。従来以上に、コーラスのレイヤーが非常に綺麗に織り上げられている所感を持ちました。理性をかなぐり捨てたような叫び声はより一層悲壮感と狂気を増しており、闇夜を感じさせるものに進化しています。
M-1“Nova”はノンビートでクリーンヴォーカルがフィーチャーされていますが、ミックスヴォーカルの美しさや妖しさがふんだんに敷き詰められた呪文であり、本作の世界観を決定づけている印象を与えます。
ブラックメタルの攻撃性を遺憾なく発揮したM-2“”Mono No Aware”の怪鳥の絶叫を思わせるスクリームをなだめるような優しい歌声の癒やし効果も抜群です。
清らかなギターに牽引される気の遠くなるような安らぎを与えるM-3“Nowhere, Still Somewhere”、音の隙間を残響が効果的に聴かせる激烈さをも飲み込んだ11分の大作M-4“Fortapt”、重たくざらついたトレモロに穏やかでキャッチーなコーラスが耳に残る悲壮的な絶叫も旨味として余韻を残すM-5“I Close My Eyes So I Can See”、祈りにも似た歌と柔らかくたなびくようなギターに心を遠く飛ばされるようなM-6“Everything Must Come To An End”と、成熟した彼女の世界を存分に堪能できます。
個人的には、様々な旅を経て、熟れて実った1st『Silent Chamber, Noisy Heart』というような感慨に耽りました。
無論、コロナ禍の様々な制限で思うように活動できなかったからこその揺り戻しや回帰なのかもしれません。
ですが、懐古ではない新たな産声と息吹を十二分に感じられる美しいアルバムです。
彼女のポートレートを使用したアートワークも妖艶で麗しいですね。


1. Nova
2. Mono No Aware
3. Nowhere, Still Somewhere
4. Fortapt
5. I Close My Eyes So I Can See ★
6. Everything Must Come To An End
Time/43:50
(2022/Season of Mist)

Score:9.4/10



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