Deviloof / Devil's Proof
日本のエクストリームメタル/デスコアバンドによる初フルレングス。
前EP“Purge”を聴いた時、ヴィジュアル系にもとうとうスラミングの波が来たんだな、と感慨深くなりました。
事実素晴らしい作品で、来るべき初フルはどうなるかと楽しみにしていたバンドでもあります。
結論として、今作はスラミング多用のブルデス好きの目線で聞くとセルアウトしたな、と思われてしまう作品になっています。
デスコアでもスラミングを多用するバンドはそう数はいなかった為、特異性を遺憾無く発揮していましたが、今作ではそれをほぼ封印してしまっているので、猟奇的な残虐性は確かに薄れています。
ただ、クオリティは抜群に高く、激しさはエクストリームメタル寄りに特化され、決して日和った感じはしません。
音楽性では初期のSuicide SilenceやJob For A Cowboyに近づいており、そこにV系らしい艶のあるクリーンVoを被せているので、やたら激しくなったLynch.と思う人もいるかもしれません。
Voの多彩さでは舌を巻きます。まだクリーンは微妙に不安定さを残していますが、グロウル、スクリーム、ガテラル、ホイッスル等何でもござれ状態。ホイッスルに関してはモスキートーンまで駆使しています。クリーン導入は鬼門で、やっぱり賛否あると思いますが結構好きですよ。
今作の優れている部分は、雑多なジャンルを自分たちのフィルターに通してしっかり咀嚼できている部分。
重たいデスコアパートに差し込まれるコーラスのアニソン的キャッチーさが癖になるM-2“ESCAPE”や、まるでMalice Mizerがデスコアを演奏しているようなワルツ的グルーヴが印象的なM-4“Return Of The Curse”、Oi!パンクとDjentが嫌みなく合わせられたM-5“DESTINATION”といった曲群で彼らの貪欲さがわかるでしょう。
後半ではさらに重心を低くながらもブラックメタル的な寒々しいメロディーが吹き荒れるM-8“EGOIST”、邪悪なトレモロリフから地獄のコーラスパートに移行するM-10“怠惰の罪”といった、とっつきやすくもV系ではなかなか聴けない邪悪な楽曲が並びます。
難点というか、自分の好みにそぐわなかったのがM-1“Devil's Proof”で、これがM-7“InCipit”のようにバンド演奏によるインストだったら、もっと良かった。
M-1のデジデジしたインストは好物ですが、今作に合っているかと言われたら疑問ではあるので。
作品の完成度としては抜群に高いので、ハードコア好きなキッズやバンギャを繋ぐ面白い作品に仕上がっていると思います。
個人的にはやっぱり“Purge”の方が好きですけどね。
ちなみにアートワークは江川敏弘氏によるもので、非常に素晴らしいですよ。
1. Devil's Proof
2. ESCAPE
3. Natural Born Killer
4. Return Of The Curse
5. DESTINATION
6. LOVER
7. InCipit
8. EGOIST ★
9. M.F.JAP
10. 怠惰の罪
11. HERO=MURDERER
（2017/Devil's Proof）
Time/39：07
