むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Enterprise Earth / The Chosen

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Enterprise Earth / The Chosen


アメリカのデスコアバンドによる4作目フルレングス。


3年ぶりとなるアルバムです。
メンバーチェンジの激しい彼らですが、前作以降にSicariusのBrandon Zackeyがドラムとして加入。
編成の変更とはおそらく関係なく、また音楽性を変化させています。端的に言えば、クリーン増し増しのメロディアスでシンフォニックなブラッケンド・デスコアをさらに加速。
デスコアバンドがクリーンを導入することに今更特段の驚きはありませんが、彼らもまたその流れに乗りました。
ロディアスなギターなどを取り入れるのは2作目から見られていたので、彼らもいよいよかとも感じられるでしょう。
今作はよりメロディックな方向にシフトしており、ダウンパートではニューメタルに接近した溜めのグルーヴもあります。けたたましいブラストビートと共に爆走するアグレッションや残虐なダウンパートは健在ですが、Voのバリエーションの豊富さとシンフォニックメタルスレスレの絢爛豪華なメロディーに主眼を置いているのは、M-1“Where Dreams Are Broken”からわかるでしょう。
Djentのように複雑なリズムセクションと残忍なリフで引きずり倒されるようなダウンパート推しのM-2“Reanimate // Disintegrate”、ド派手なオーケストラを配置してシンフォニックブラックをデスコアに落とし込んだM-3“Unleash Hell”、ニューメタルに近い陰鬱さを漂わせて流麗なギターを薄く漂わせるグルーヴィーなデスコアM-4“I Have To Escape”と、割と最初からキャラクターの異なる曲を配置しています。
喚き散らすVoとキレのあるリフで暴虐性を遺憾なく発揮するM-6“They Have No Honor”ではエモーショナルなクリーンのコーラスを披露し、悲愴感に溢れたクリーンやアトモスフェリックな音処理でプログレッシヴな音像を聴かせるM-7“Overpass”、Bleeding Throughもかくやな荘厳で邪悪な味付けを施したシンフォニックデスコアM-10“Legends Never Die”と、賛否分かれそうですが派手さに振り切った曲を中盤に置く構成で飽きさせないような工夫が見られますね。
ハンマーでぶん殴ってくるようなリフで力押しのデスコアを聴かせてくれるM-12“Skeleton Key”、光を感じさせるキーボードのきらびやかさと地獄のようなダウンパートを万華鏡のように入り組ませる今作のハイライトであろうM-13“The Chosen”で聴けるメロスピのような爆走パートは非常にキャッチーで爽やかな終わりに繋げてくれます。
初期のファンであればもしかすると透かされるかもしれません。
クリーンパートの説得力は増してはいるものの、ここからどう変化していくのか掴みづらい作品ではあります。
ブルータルなインパクトは減退していますが、暴虐と叙情のコントラストはなかなか得難いものがあるので、前作のファンやメロディアスでシンフォニックなデスコアが好きな人には刺さる作品ですね。
ただ個人的には、この作風でいくならばもう少しコンパクトにすれば言うことなかったです。67分ありますからね。長いです。
カバーアートは非常に美しく、世界観を凝縮した感じで彼らのオカルティックな世界観を感じ取れますよ。


1. Where Dreams Are Broken
2. Reanimate // Disintegrate
3. Unleash Hell ★
4. I Have To Escape
5. The Tower
6. They Have No Honor
7. Overpass
8. You Couldn’t Save Me
9. Unhallowed Path
10. Legends Never Die
11. My Blood Their Satiation
12. Skeleton Key
13. The Chosen
14. Atlas
(2022/eOne)
Time/67:45

Score:8.6/10


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