むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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The True Werwolf / Devil Crisis

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The True Werwolf / Devil Crisis


フィンランドブラックメタルバンドによる初フルレングス。


Satanic Warmarterの新作です。
というのは半分本当で、SxWxことWerwolf氏の別プロジェクトがこのThe True Werwolfです。
そもそもがプロジェクトを分ける必要があるのかと思ってしまうほどには、両者の音楽性に差異はさほどありませんので、身構えなくても大丈夫。
とは言え今作、最近のSxWxよりも初期SxWxに近いメロディアスなブラックメタルを聴かせてくれ、さらに音質も良好なのでSxWx関連では最も聴きやすく、悪魔城ドラキュラに敬意を払ったメロディーにファンがニヤリとするであろうトレモロが吹き荒れるM-4“Chi No Namida”を聴けばわかるように、Werwolf氏の思想よりは嗜好がふんだんに散りばめられています。
うっすらと冷たいシンセがトレモロに覆い被さりやけっぱち気味に爆走するM-1“My Journeys Under The Battlemoon”、拍に余裕を持たせたドラムに冷酷で神秘的なシンセを被せて疾走するシンフォニックブラック的な味わいも持つM-2“Thy Deviant”、邪悪な呪文で何かを呼び起こす演出で吹雪の中迫ってくる王道的ですらあるコールドブラックM-3“Spellbound”に、いつものSxWxを洗練させた輝きがあることに嬉しくなりますね。
雄々しいギターに先導されて英雄的なメロディーが乱舞する非常にキャッチーなM-5“0373”の驚きや、一際邪悪で陰惨なメロディーラインとバタついたドラムにSxWx“Strength & Honour”を彷彿とさせるM-6“The Witch Of My Heart”、さらにキャッチーな黒々としたリフと弾きまくるギターソロすら拝めるブラッケンロールが楽しくなるM-7“Magick Fire”で〆る辺り、このプロジェクトの遊び心も非常に心憎い。
初期SxWxに近い叙情性を発揮しており、さらにRawではない録音なので、こちらの方が本家より好む人も結構いるのではないかと思う快作ですね。
一発録りのような本家のRawな衝動は薄まっていますが、反面様々なブラックメタルの旨味を結果的に吸い上げているのが面白い作品です。
フィンブラの邪悪で冷たく芋臭いメロディーの何とも言えない旨味はしっかり健在していますよ。


1. My Journeys Under The Battlemoon
2. Thy Deviant ★
3. Spellbound
4. Chi No Namida
5. 0373
6. The Witch Of My Heart
7. Magick Fire
(2020/Werwolf)
Time/44:35