むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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天国注射 / struggle


天国注射 / struggle


日本のロックンロール/パンクによる2作目フルレングス。



昨年フジロックにも出演し、知名度を上げた彼らの間髪入れずに放たれた2作目ですが、端的に素晴らしく暴力的な熱量を帯びたパンク/ハードコアに徹したアルバムです。
影響源と公言しているあぶらだこやじゃがたらといったジャパニーズ・ハードコアの継承者たる貫禄が出てきています。The StoogesやBlankey Jet Cityに通じる分厚くヘヴィでソリッドなロックンロールとしての表情もまた頼もしい。
とは言え、世界観の根幹たる池澤健が提示する「耐え難き苦痛に耐える」といったメッセージ性の強さは健在。
何しろ本作はタイトルが示すように、「闘争」がテーマです。そのためか、直線的な楽曲が並び、ショートレンジに収められています。10曲約25分という潔さが雄弁です。さらに、本作は彼らが拠点とする難波ベアーズでの一発録りという、潔さを徹頭徹尾貫いています。眼前にライヴパフォーマンスが繰り広げられるよう。ある程度調整されてるかとは思いますが、音の鳴りが良いです。ミックスが非常に良い。前作『春彦』でも感じましたが、非常にソリッドで艶のあるプロダクションが耳に馴染みやすいのです。
前作の「芋虫」や「私は貝」のようなポストロック~ニューウェイヴを繋ぐような質感のヘヴィに落とすサイケデリアは控えめですが、前へ前へ出ようとするアグレッシヴさは狂犬のごとき熱量を体得しています。
荒々しさを重視した作品ですが、ヴォーカルの瑞々しさはより際立っていますね。訥々と心情を述懐するような懐深さと実生活に即した歌詞が相俟って、歯切れの良さと生々しさが表出している不思議な聴き心地は変わらず。全体的に闘争を意識した歌詞ですが、ネガティヴな心情から湧き出てくるような印象もあって、明治から昭和にかけての純文学的な手触りです。それは前作からの地続きだと感じられるはず。


タイトに刻むドラムが先導してギターが唸りを上げるM-1「越冬闘争」からして、天国注射というバンドの特異性が遺憾無く発揮されています。
まるでKilling JokeとQomolangma Tomatoがリンクしたグツグツと煮沸するベースがドライヴするM-2「勤労少年発狂」、さらに切迫感を強めたリズムが聴く者を煽るハードコアパンクM-3「欠落」から、なだらかなハイハットやギターノイズが美しいアンビエントM-4「換気扇を見つめて」と一気に駆け抜けていきます。
耳に残るリフが乱反射するストレートなロックンロールで煽りまくるM-5「疾走して失踪」、ファニーで気の抜けたギターとヴォーカルが脱力するグルーヴを構築してから重厚さを増すM-6「朝が来るまで」、卓越したリズムキープとギターのセッションが楽しいM-7「AM 7:00起床」からさらにスピードを上げる暴れ曲M-8「百姓一揆」に繋げる様の堂々たるライヴバンド感に惚れ惚れしますね。
アコースティックセットで控えめに後ろ向きな歌を訥々と歌い上げるM-9「望郷」、詩情を感じる柔らかなギターに祈りのような歌が乗るクロージングM-10「今日は死ぬのにもってこいな日」にいたるまで、濃縮した楽曲が並びます。


一発録りとは、言われるまで信じられない緻密なアンサンブルが楽しめます。彼らの歌うものはプロレタリアートに通じるものですが、だからこそかパンクバンドしての佇まいが非常に生々しいです。より切実な、切れ味の鋭さは非常に響きます。それでいて、隠せないリリシズムが滲み出ています。
単純に頭を空にして暴れられるテンションの高さが魅力の一つですが、そこに留まらない池澤健のカリスマ性が前に出始めてきた印象を受ける傑作です。
リピート性の高さも魅力の一つですね。個人的には、前作収録の『私は貝』のようなスロウでヘヴィなサイケの長尺曲があれば、なお手の付けられない作品に仕上がっていたかもですね。


1. 越冬闘争
2. 勤労少年発狂
3. 欠落
4. 換気扇を見つめて
5. 疾走して失踪 ★
6. 朝が来るまで
7. AM 7:00起床
8. 百姓一揆
9. 望郷
10. 今日は死ぬのにもってこいな日
(2025/自主制作)
Time/25:22

Score:9.0/10


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