むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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The Ember,The Ash / Fixation

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The Ember,The Ash / Fixation


カナダのアトモスフェリック/シンフォニック・デスコアバンドによる初フルレングス。



若手人気急上昇中の独りアトモスフェリック/ポスト・ブラックメタルバンドUnreqvitedこと鬼の別プロジェクトです。
前EP“Consciousness Torn from the Void”ではまだUnreqvitedに近いアトモスフェリック・ブラックを表現していましたが、今作ではガラッと様変わりしています。
アトモスフェリックな要素を残していますが、M-4“The Colossal Void”に象徴されるような、Emperorらノルウェーのシンフォニック・ブラックに通じる寒々しく邪悪なメロディーを増強、ソリッドなリフや重圧感あるリフで極端にアップダウンする高低差を強調したデスコアを聴かせます。Unreqvitedではただ叫ぶに近い楽器と化したヴォーカルも、高音域の厳ついスクリームやグロウルを駆使するスタイルです。独りバンドの特性を活かし、エレクトロの要素をふんだんに盛り込んでいるのも特徴的。
阿鼻叫喚にのたうつVoのバックでアンビエントドラムンベースなど次々と表情を変えるM-1“Strychnine”、重苦しく跳ねるギターに加えて涼やかなエレクトロビートを織り込み緩急をつけるM-2“Fixation”、絢爛なオーケストラをバックにキレのあるリフや麗しく邪悪なメロディーを聴かせるM-3“Becoming the Eidolon”、キーボードの妖しい音色とギチギチに締め上げるリフのコントラストが映えるM-5“Celestial Fracture (The Tempest)”の前半から中盤にかけては、The Bleeding Throughや初期Make Them Sufferを彷彿とするシンフォニック・デスコアが並びます。
ですが、後半の2曲M-6“A Growing Emptiness”、M-7“Consciousness Torn from the Void”はゆったりと聴かせるアトモスフェリック・ブラックに近い幽玄で邪悪な雰囲気が立ち込め、独自性ありますね。特に10分近い大曲M-7ではUnreqvitedで聴ける幻想的なトレモロを前面に出しており、北欧ブラックに連なる寒く冷たいブラックメタルに落とし込んでいます。
純粋なデスコアというわけではないですが、コールド・ブラックに近い悲壮感を張り巡らした聴きどころの多いブラッケンド・デスコアな一枚。
こういうアプローチはUnreqvitedとも異なるので大歓迎ですね。



1. Strychnine
2. Fixation
3. Becoming the Eidolon
4. The Colossal Void ★
5. Celestial Fracture (The Tempest)
6. A Growing Emptiness
7. Consciousness Torn from the Void
(2021/Prosthetic Records)
Time/36:55

Score:9.0/10


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