Gary Numan / Savage:Songs From A Broken World
UKのオルタナティブ/SSWによる18枚目フルレングス。
王者の風格漂う作品です。
ニューウェイヴ/シンセポップを軸に、インダストリアルやハードロックを取り入れた作風は健在。
前作からかなりヘヴィになり話題になりましたが、今作もその路線でゴシックヘヴィロックとでも言うような重厚さは踏襲されています。
そもそもゴシックなシンセポップにインダストリアルを合わせてラウドに聴かせる手法自体、彼の十八番。
ですが今作、とてつもなく重い。
演奏で聴かせる直接的な重さだけでなく、精神的な根本から来る重さがあるんですよね。
それ故、前作以上に凄まじいまでの緊張感が全体を締め上げています。
この手の音楽性ではゴッドファーザー的な存在であることが明確にわかるでしょう。
盟友でもあるDepeche Modeとの相互関係は勿論のこと、いわば彼の子供でもあるNine Inch Nailsや孫にも近いMarilyn Manson、果てはUSのニューメタル勢までもを巻き込んだような、ダークでヘヴィなグルーヴの心地好さは筆舌に尽くしがたい。
この作品の素晴らしいところは重厚なサウンドプロダクションだけでなく、メランコリックなメロディーの良さも挙げられます。
電子ノイズの無機質な粒子が徐々に不穏ながらも優美なメロディーラインを追いはじめるようなM-1“Ghost Nation”の威風堂々たる風格から迫力満点。
淡々と舞踏するようなダークに渦巻くM-2“Bed Of Thorns”のヘヴィロック顔負けのラウドなボリュームを引きずるヘヴィファンクM-3“My Name Is Ruin”に響く透き通ったNumanのVoは絶品。
アタック感強めの比較的キャッチーな前半から浮遊するシンセの壮大なメロディーが牽引するM-5“And It All Began With You”を引き裂くような四つ打ちの攻撃性が前面に出たM-6“When The World Comes Apart”を通過して作中最もダークなM-7“Mercy”へと至る流れは偏執的ですらあります。
この作品のデラックス盤でしか聴けないM-10“If I Said”の祈るような絶唱をリフレインするかのように雄大に迫り来るM-11“Broken”で統括する構成も凄いですね。
この作品を聴けば、今も活躍している多くのアーティストの礎が感じられると思います。
それを尚、最新の姿として提示するGary Numanの矜持と情熱に胸撃たれる大傑作です。
1. Ghost Nation
2. Bed Of Thorns
3. My Name Is Ruin
4. The End Of Things
5. And It All Began With You
6. When The World Comes Apart
7. Mercy ★
8. What God Intended
9. Play For The Pain You Serve
10. If I Said
11. Broken
(2017/BMG)
Time/62:39
M-10デラックス盤ボーナストラック