むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Ulma Sound Junction / imagent theory

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Ulma Sound Junction / imagent theory


日本のプログレッシヴメタル/ロックバンドによる3作目フルレングス。


初めて聴きましたが、素晴らしい作品です。
様々な要素がごった煮のように合わさっていますが、一聴して思うのは90年代モダンヘヴィネスを明らかに通過しているな、ということ。
そして、彼らのメロディーラインは叙情派ニュースクールハードコア的な美しさがあるということ。
確かによく言われるDjentのようなリズミカルなリフ捌きはあるのですが、ひたすらギョンギョンした重いリフを聴かせるバンドではないです。
恐れずに言えば、この作品を聴いていて浮かぶのはCynicです。
それも“Focus”~“Traced In Air”辺りのプログレデスだった頃のCynicなんですね。
そう思わせるに足るのが、時にファンクネスすら漂わせる動きまくるベースと、正確無比に統制されたドラム。
この二つが軸にあって、さらにメロディアスだったりスラッシーだったりDjentだったりを縦横無尽に行き交うツインギターが被さる形で基盤が出来上がっています。
その上でこの音を絶対的なものたらんとしているのが、Voです。
伸びやかに美声を響かせるクリーンと破壊的に全てを薙ぎ倒すようなスクリームを操るVo&B.田村ヒサオ氏の圧倒的な声量は、オープナーM-1“OverCure part.1”から聴け、Tool/A Perfect CircleのMaynard James Keenan並の長い絶叫に鳥肌が立つはず。
叙情的な歌い回しから溜めを効かせた重圧感溢れるグルーヴが大地を抉るM-2“Dzalel”、スラップ気味に跳ねまくるベースが暴れまくるハードコアに優美なクリーンパートが凪のように現れるM-3“俄か凪”という前半の熱量が素晴らしい。
熱をスッと冷ましてくれる叙情ギターが涙を誘いつつVoがえげつない咆哮を轟かせるM-4“Shooting Testament”、ポストロックを彷彿とさせる美しく残響を聴かせる切ないクリーンから感情を昂らせる重厚なディストーションが心地好いM-5“Silver Memories”の中盤も一気に聴かせます。
銀盤と重いノイズが郷愁を誘うインストM-6“Glasya-Labolas”を引き裂くM-1の続編M-7“OverCure part.2”で再び荒ぶる姿を見せて、作中最も邪悪なメロディーを聴かせる暴虐性とフュージョン/AORの爽やかさをごく自然に溶け込ませる手腕に脱帽するM-8“Elysium”で幕を下ろす圧倒的な構築力が素晴らしい。
卓越した演奏力を、決して技術のひけらかしに終わらずあくまでメロディーの良さを際立たせることに全振りさせているので、様々な層にアピールしうるポピュラリティも獲得しています。
冷静に曲を操る構築力だけでなく、命を削るような直向きな情熱にも胸を熱くする傑作です。
これは聴かなきゃあなたの音楽人生、少し潤い足りてなくない?とぶちあげたくなりますね。


1. OverCure part.1
2. Dzalel
3. 俄か凪
4. Shooting Testament
5. Silver Memories
6. Glasya-Labolas
7. OverCure part.2
8. Elysium ★
(2017/ORGA)
Time/41:47