むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Mr.Bungle / The Raging Wrath Of The Easter Bunny Demo

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Mr.Bungle / The Raging Wrath Of The Easter Bunny Demo



USのオルタナティブロック/メタルバンドによる4作目フルレングス。


稀代のVoであるMike Pattonによる実験的な要素を濃く感じさせるバンドの印象でしたが、21年ぶりとなる今作ではある意味彼のキャリアでも最もわかりやすい作品に仕上がっています。
まず確実に元SlayerのDave LombardoとAnthraxのScott Ianの影響とDead Crossからの呼び水でしょうが極めてストレートなスラッシュメタルを繰り広げています。
PattonのVo自体も、トレードマークでもある七色の声音を存分に披露というよりは、スラッシュメタルにピッタリな吐き捨てが中心でかなりかっこいいですね。
変態的な歌い回しは幾分控えめで、真面目にかっこいいPattonがここにはいます。
元々が結成当時のデモを下敷きにした作品なので、昔の自分に近づける意図もあるのでしょう。
ゆらりと呪術的なメロディーが立ち上るギターの艶かしいインストM-1“Grizzly Adams”を抜けて一気にギアを入れて爆走するM-2“Anarchy Up Your Arms”を聴けば、かなり本気にスラッシュをやってやろうという気概を感じますね。
ザクザクした高速リフが切り刻み太いドラムが駆け抜けていくM-3“Raping Your Mind”、前のめりで突っ込むロックンロールのリズムが気持ちの良いコーラスに雪崩れる陽気なS.O.D.のカバーM-4“Hypocrites / Habla Español O Muere”に、今作のコンセプトがかなり明快にスラッシュメタルをやる、であることが伝わってきます。
狂気のスラッシュビートが急激にBPMを落としたり加速したり翻弄しながら弾き倒されるソロも渋いデスラッシュM-5“Bungle Grind”、淡々としたドラムにザクザクとしたリフを合わせてヒステリックな爆走を緩めない約9分間を聴かせるM-6“Methematics”、猟奇的な雰囲気を出しつつストップ&ゴーを味つけに添えるキャッチーで華やかなM-7“Eracist”、ノリのいいバスの気持ち良さとザクザクしたクランチの快感が徐々に暴走するM-8“Spreading The Thighs Of Death”、さらに高速のクランチリフと狂ったような喚きで突貫してくるCorrosion of ConformityのカバーM-9“Loss For Words”と軽妙な展開にニヤニヤしっぱなしになります。
やたらキレまくるリフとドラムがさすがの掛け合いで魅せる貫禄の演奏とキメの邪悪な囁きがクールなM-10“Glutton For Punishment”、ザクザクしたリフの後ろでベースが主張する作中最も捻りに捻った展開が聴ける暴虐的なM-11“Sudden Death”と、尾の先までたっぷり詰まったスラッシュメタルのアルバムです。
非常に楽しみにしていた作品なのですが、ここまできっちりとスラッシュメタルをやると思わなかったですね。
Mr.Bungleと言えば実験的で捻った変態的な音楽性も多分に期待するのですが、そういった要素を待ち望んでいた方には透かされるかも。
これをMr.Bungleでやる意義はあるのかは正直わからないですが、あまりに楽しそうで、何より私自身Mike Pattonの極めてストレートなメタルは待っていたので間違いなく傑作だと思います。
Slayerの鋭い猟奇性とAnthraxの軽妙なギター捌きがしっかり両立した、素晴らしい一枚。
この噛み合わせ悪そうな両者をしっかり乗りこなすMike Pattonやっぱり凄いや。



1. Grizzly Adams
2. Anarchy Up Your Arms
3. Raping Your Mind
4. Hypocrites / Habla Español O Muere
5. Bungle Grind
6. Methematics
7. Eracist
8. Spreading The Thighs Of Death
9. Loss For Words
10. Glutton For Punishment ★
11. Sudden Death
(2020/Ipecac
Time/56:27