むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Kataklysm / Unconquered

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Kataklysm / Unconquered



カナダのメロディックデスメタルバンドによる14作目フルレングス。


90年代からいる古豪のデスメタルメロデスに転向して幾星霜、コンスタントにリリースする有り難い存在ですね。
大ベテランではありますが、Djentなど、モダンな要素もさらっとかすらせて自身の血肉にしてしまう柔軟さもあります。
元々がテクニカルなデスメタル出身なので、そういった要素を織り込むのにも抵抗はないようです。
ドラムが今年より変わっており、Hiss From The MortのJames Payneが加入、彼はHour Of PenanceやVital Remainsでも叩いていた経歴の持ち主で、彼の若々しく激烈なドラムが今作でも披露されています。
全体として前作の延長ではあるのですが、今作はよりメロディーが強調されているのがM-1“The Killshot”の哀愁あるイントロ、広がりのある楽曲展開からも窺えますね。
だからと言って攻撃性が下がったのかと言えば全然そんなことはなく、単音リフを刻みつつ叙情的なリードを這わせて突進するメロデスラッシュM-2“Cut Me Down”、重心を下げたグルーヴでBPMをどんどん加速させる破壊的なブリッジから開放的なコーラスに繋がるM-3“Underneath The Scars”、歯切れのいいザクザクしたスラッシーなリフで刻みつつ無常感のあるメロディーでうっすら覆うM-4“Focused To Destroy You”と、叙情と攻撃性の混ぜ方がかなり胸の空くような展開。
広がりのあるギターメロディーを転がしつつグルーヴィーなリフでメリハリを効かせたM-5“The Way Back Home”、さらにメロディアスなフレージングから武骨にスラッシーな刻みを挟むモダンなM-6“Stitches”、爆走するブラストで頻繁にリズムチェンジを見せる面目躍如のテクニカルデスM-7“Defiant”を経て辿り着く、哀哭のメロディーで幕を上げる今作最もドラマティックなM-8“Icarus Falling”の盛り上げ方が素晴らしい。
この曲はバッキングにドラムトラックを織り交ぜて劇的なメロデスに仕上げている、なかなか感性が若返った印象。
かなり叙情的なため、大きく舵を取る壮大なM-9“When It's Over”が完全にエンドロール的な雰囲気をまとっています。
ベテラン故の安定感とそこに留まるを良しとしない貪欲さを持った一枚です。
首魁Maurizio Iaconoの鬼の咆哮も冴え冴えとしていて惚れ惚れしますね。
“Unconquered”は「征服されていない」の意。現在の世界のことを指しているのでしょうが、どことなくバンドはまだまだやれるという気概を感じて頼もしいです。
相当枚数を出しているのにネタ切れを感じさせないのは凄いですね。



1. The Killshot
2. Cut Me Down
3. Underneath The Scars
4. Focused To Destroy You
5. The Way Back Home
6. Stitches
7. Defiant
8. Icarus Falling ★
9. When It's Over
(2020/Nuclear Blast)
Time/38:00