むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Exit / Traces Of Human Existence

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Exit / Traces Of Human Existence


スイスのデスメタルバンドによる5作目フルレングス。



前作から片鱗を見せていましたが、今作は大々的に変化を遂げています。
元々ハードコア要素もあるクロスオーバースラッシュを混ぜたデスメタルを演奏していましたが、今作ではハードコアでも叙情派ニュースクールの要素を大幅に増強した音楽性に変化しました。
デスメタルの重さを脱ぎ捨てた代わりに、気持ちの良い体感速度は増しており、ここぞとばかりに青いメロディーM-1“The Power The Hate The Greed”から叩きつけてきます。
もったいつけたブレイクから緩やかに立ち上がってずらしたような拍のリフも心地好いM-2“None Of Our Business”、重たくも叙情的なフレーズを練り上げて大砲のようなドラムで乱雑に疾走するM-3“The Final Youth”、一転してジャジーなギターでしっとりしたイントロを叩き潰すざらついたリフから一気に加速するM-4“Only Pain Is Real”に辿り着く頃には、彼らの変化にも馴染んできますが、M-5“Born To Burn”で初期を思い出させるスラッシーなデスメタルを放り込みますが、この曲の質感もしっかり今作の空気に統一されています。
ざらざらしたドラムの乱打に哀愁あるブルージーなリフを絡めてメロデスのように聴かせるM-6“Miserable Life”、陰鬱で美しいフレーズを放射しながら忙しなく疾走するメタルコアに接近したM-7“Empire”、軋みを上げる厚いリフとハイハットが重苦しくも小気味の良い疾走感で走るM-8“To The Void”、ばたついたドラムと激情を込めたダミ声とグロウルを織り混ぜて武骨に作品を〆るM-9“The Lion's Share”と、ガラリと変えてもきっちり聴かせる地力がある作品です。
この作風がハマっているのは、意外とVoによるもので、以前の作品と比較しても歌唱法があまり変わっていないんですよね。
単純に音楽性の違いで聴こえ方がここまで変わるのかという驚きのある一枚です。
とは言っても昔の音楽性が好きなら無理に薦める作品ではないですし、今作をデスメタルと思えない人がいるであろうことも理解できます。
アートワークも全く違いますからね、私は今作のジャケットとても好きです。



1. The Power The Hate The Greed
2. None Of Our Business
3. The Final Youth
4. Only Pain Is Real ★
5. Born To Burn
6. Miserable Life
7. Empire
8. To The Void
9. The Lion's Share
(2020/Art Gates Record)
Time/36:06