むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Mystic Prophecy / Metal Division

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Mystic Prophecy / Metal Division


ドイツのパワーメタルバンドによる11作目フルレングス。



時にデスメタルスラッシュメタルに肉薄する攻撃性を放つ、重量感で圧倒する作風のベテランです。
近年、徐々に軽やかさを増し、更に前作がジャンル問わず往年の名曲をハードロック調に仕立て直した彼らのポップサイドを発見したカバーアルバムだっただけに少し不安でしたが、杞憂です。
首魁であるRoberto Dimitri Liapakis(Vo)の暑苦しく雄々しい歌声を軸に軋み唸りを上げるリフが分厚く硬いM-1“Metal Division”から、彼ららしさが炸裂しています。
小気味のいいドラミングから重量級のグルーヴで疾走して哀愁のコーラスがこびりつくM-2“Eye To Eye”、叙情を引きずったまま重たく軋むミドルテンポが心地好いM-3“Hail To The King”、冷たく美しいフレーズを密やかに反復しながら華やかさすら感じさせるも漢臭い歌唱で歌い上げるM-4“Here Comes The Winter”の序盤で、完全にMystic Prophecyの黄金律を組み上げています。
邪悪でエキゾチックなギターフレーズでゆったりと幕を上げて一転けたたましく踏み鳴らされるバスで大地を蹂躙するM-5“Curse Of The Slayer/666:8 Messiah”、Aerosmithに憧れを抱くようなロックンロールのグルーヴで回転するポップなM-6“Dracula”、華麗にシュレッドをキメながら軽やかに爆走する彼らなりのネオクラシカルなスピードメタルを聴かせるM-7“Together We Fall”の躍動感たっぷりの中盤をしっとり落ち着かせる湿り気あるギターでバラードがはじまるかと思えば一気にスラッシーに突進するM-8“Die With The Hammer”のドラマチックな聞き応えに頬が緩みます。
ざっくりしたリフの裏で甲高く祈りを捧げるようなギターが印象的なM-9“Re-Incarnation”、物悲しいメロディーが後を引くいぶし銀の魅力に満ちたM-10“Mirror Of A Broken Heart”、最後とばかりに疾走するコーラスで雄々しく駆け抜けるM-11“Victory Is Mine”と最後までぶれずに漢臭いメタルアルバムに仕上げています。
前作のカバーを経てか、自分たちの重量さにうまくポップなアプローチをかますことに成功している作品です。
武骨で職人気質なので日本ではイマイチ人気が出ないのがファンとしては寂しいところ。



1. Metal Division
2. Eye To Eye
3. Hail To The King
4. Here Comes The Winter
5. Curse Of The Slayer/666:8 Messiah
6. Dracula
7. Together We Fall
8. Die With The Hammer ★
9. Re-Incarnation
10. Mirror Of A Broken Heart
11. Victory Is Mine
(2020/Rock Of Angels)
Time/43:39