むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Nyktophobia / What Lasts Forever

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Nyktophobia / What Lasts Forever



ドイツのメロディックデスメタルバンドによる3作目フルレングス。


薄闇の冷えた夜気を吸い込み、叙情的なギターが渦巻く素晴らしい作品です。
ジャーマンメロデス特有の張り詰めた演奏と北欧メロデス的な透明度の高い叙情性が見事に合わさり、シンプルかつメロデスの最奥を覗かせる深遠な聴き心地を与えています。
月明かりで照らされるような物悲しいインストM-1“Once”に導かれるM-2“Echoes Of The Past”の凶暴な中に悲哀が滲んだグロウルとどこまでも咽ぶ哀愁のツインリードに、否応なしに心が鷲掴みになりますね。
鋭く刻むリフから一気に加速するデスラッシュ染みたM-3“Nightwanderer”のトレモロの冷やかさ、馴染みやすいフレーズを弾いたかと思えば爆発するようにギターが闇夜を駆けるM-4“The Appearance Of The Seven Suns”、雨が降りしきる中に立ち尽くすかのような身を切る冷たいメロディーが心地好い鼓動を刻むM-5“Yearning From An Uncharted Grave”と冷え切った叙情に身を浸す中盤の快感はかなり中毒性があります。
大きく舵を取る雄大な湖に陽が差し込むようなギターが美しいM-6“Beyond The Horizon”、魂を切り刻む冷酷なトレモロがドラムと共に暴虐性を振り撒くM-7“What Lasts Forever”、夜の曇天を月光が裂く美しいギターが縦横無尽に乱舞するM-8“The Invocation Of Era”を経て、篝火を前に踊り手が舞うような優美な空気に満ちた終幕M-9“Moribund”と、どこを切り取っても薄闇の美しさに満ちています。
今作は非常に冷たい叙情性と暴虐性が盤を支配していますが、ブラックメタル的な邪悪さだけではなく、あくまでデスメタルとして凶暴さに満ちているのも非常に喜ばしい作品です。
惜しむらくはかなりコンパクトな作品なので、もっと聴きたい気持ちになってしまうことですね。
ただ間違いなく、今作は今年を代表するメロデスアルバムに数えられる一枚です。
イマジネーション掻き立てられるアートワークも非常に美しい。



1. Once
2. Echoes Of The Past
3. Nightwanderer
4. The Appearance Of The Seven Suns
5. Yearning From An Uncharted Grave ★
6. Beyond The Horizon
7. What Lasts Forever
8. The Invocation Of Era
9. Moribund
(2020/自主制作)
Time/32:59