Stone Temple Pilots / Stone Temple Pilots(2018)
USのオルタナティヴロックバンドによる8作目フルレングス。
類い稀なVoであったScott Weilandと彼のChester Benningtonを相次いで亡くしたことで今後の活動を不安視されていたバンドですが、新たなVoにJeff Guttなる人物を迎え、再スタートを切りました。
まず、“Core”のような妖しく毒気のあるグランジ寄りの音楽性ではないことは名言しておきます。
Chester期のような華やかな感じでもありません。
だからと別物になっているわけでも当然なく、メンバーの年齢的にもルーツとしてあるはずの、クラシックロック寄りのハードロックに寄せています。
JeffはScottとChesterに共通するVoのタイプで、ひりついたノーマルの声質は従来のSTPのスタイルによく馴染んでいて、ファンなら喝采だと思います。
それとは別に特筆すべきは、濁りのないクリーンのハイトーンも駆使する人物であるということ。
このクリーンが、現在のSTPにまあ合うこと。
“Vatican”辺りから傾倒していたメロディアスな方向性が、今作で結実しており、これはJeffによる賜物だと思います。
かといって、従来のSTPらしい粘度の高いグルーヴでうねるM-3“Meadow”でもしっかり聴けますし、何より今作はスロットル全開の激しいR'N'RナンバーM-1“Middle Of Nowhere”で幕を上げ、どっしりしたグルーヴで揺らせるM-2“Guilty”からの橋渡しなので、序盤でストーリーが出来上がっています。
今作、M-5“Six Eight”やM-8“Never Enough”のようなミドル&グルーヴィーな曲が目立つのはそれらの曲が異様にキャッチーでポップとすら言えるからでしょう。
さらに、アコギで陽だまりのようなメロディーを奏でるシンプルなM-6“Thought She'd Be Mine”や、レイドバックした演奏に滑らかな歌と穏やかなメロディーが映えるM-9“The Art Of Letting Go”、雰囲気たっぷりなベースにロマンチックなメロディーが添い遂げる感動的なミドルバラードM-10“Finest Hour”といった曲が非常に効果的で、Jeffのクリーンを惜しげもなく聴かせてくれます。
全体的にはポジティブで穏やかですらあるアルバムの中で、M-8“Roll Me Under”の爆発するストレートな速さや、粘るグルーヴに沈み込むようなM-11“Good Shoes”はピリッと作品を締めてくれます。
前任者と似たスタイルの歌唱と独自のトーンを見事にバンドに結合させた新生Stone Temple Pilotsが聴ける作品です。
STPとしてのScottの遺作となった前作と同じセルフタイトルにしたのも、ここから新章を記していく、という決意表明を感じ取れます。
それほどまでに今作は明るく、力強いです。
Scott期の毒気やChester期の華々しさを期待して聴くとすかされるとは思いますが、単純に素晴らしいアルバムですよ。
この編成での活動が続いてくれることを望みたいですね。
1. Middle Of Nowhere
2. Guilty
3. Meadow
4. Just A Little Lie
5. Six Eight
6. Thought She'd Be Mine
7. Roll Me Under
8. Never Enough
9. The Art Of Letting Go
10. Finest Hour ★
11. Good Shoes
12. Reds&Blues
13. Already Gone
(2018/Rhino)
Time/51:18
M-13日本盤ボーナストラック