むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Thousand Below / The Love You Let Too Close

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Thousand Below / The Love You Let Too Close


USのポストハードコア/叙情派ハードコアバンドによる初フルレングス。


端的に言って、素晴らしい作品です。
青く澄み渡るようなエモーショナルなメロディーの美しさを、激しく衝動的な演奏で聴かせる。
音楽性そのものは非常にシンプル。
彼らの音楽は重たくはありますが、決してメタル然としているわけでなく、リフの組み上げ方やプロダクションはまさしくハードコア寄り。
メロディーラインが青く叙情的で、個人的にはMorning Again辺りを彷彿とさせてくれます。
Riseがサインした理由もよくわかります。
残響を活かしたギターサウンドの構築に加えて、James Debergの剛柔兼ね揃えた歌唱が彼ら最大の魅力。
凄絶なハイピッチスクリームと甘さを残しつつ力強いクリーンと男前な風貌を武器に、ぐいぐいと曲を牽引してくれます。
そのため、アンセミックなM-1“Sinking Me”からしてギターサウンドよりもVoの力で幕開けを宣言しています。
Voとギターが切ないハーモニーを聴かせるM-2“Tradition”や浮遊感のあるメロディーをエモーショナルに響かせるM-7“Follow Me Home”といった曲では本当にメロディーを大事にしているんだなと思わせてくれます。
反面、荒ぶる疾走感を武器にしたM-3“Never Here”やストレートに激情を叩きつけてくるM-9“Vein”がただ軟弱なバンドではないことを示しています。
アルバムの中でしっかりメリハリをつけているので、寂しげなVoが美しく響くM-10“No Place Like You”やM-11“Into The Grey”の重たい轟音もたまらなく機能的。
詩情と激情の交錯が重厚かつ美しく胸に迫る傑作ですね。
初作にしてこの完成度とは、恐れ入ります。
製作に1年かけたようで、レーベルの期待と自分たちの創作意欲が巧くマッチしたんだなと、若いバンドを大切にする印象のあるRiseの采配もいい方向に働いていますね。


1. Sinking Me
2. Tradition
3. Never Here
4. Sleepless
5. Carry The Weight
6. The Love You Let Too Close
7. Follow Me Home
8. The Wolf And The Sea
9. Vein ★
10. No Place Like You
11. Into The Grey
(2017/Rise)
Time/40:39