むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Omnium Gatherum / The Burning Cold

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Omnium Gatherum / The Burning Cold


フィンランドメロディックデスメタルバンドによる8作目フルレングス。


非常に美しい、素晴らしいアルバムです。
私は前々作“Beyond”が彼らの作品では一番好きで、あの作品に流れていたAORやジャズにも近い優美な空気感が、前作では結構抑えられていたことに残念さを覚えました。
アグレッションを増強させた王道メロデスとしての強度を研ぎ澄ませた前作の路線に、前々作の優美さを落とし込ませることに成功したのが今作です。
序曲となるインストM-1“The Burning”から聴けるような、絢爛なキーボードが全編に渡って実にいい仕事をしています。
アグレッションと四つ打ちのダンサブルなアプローチががっぷり噛み合った彼らの新たなアンセムM-2“Gods Go First”から感じる風通しの良さが今作の空気を如実に表しています。
彼らが得意とする少し土着的なメロディーを都会的な音像に溶け込ませるM-3“Refining Fire”、物憂げで優美なシンセを雄大ヴァイキングデスにまとわりつかせたM-4“Rest In Your Heart”、夜の海を駆け抜ける疾走感が爽快なコーラスに雪崩れ込んでいくM-5“Over The Battlefield”の流れで心を鷲掴みにされる方も多いのでは。
キラキラとシンセが舞い降るような解放感が巧く慟哭のメロデスに合わさる必殺のM-6“The Fearless Entity”から胸を掻き毟るような哀しげなメロディーが疾走するM-7“Be The Sky”、ブラスト染みた暴虐的なドラムと単音リフがザクザクと切り裂くメロデスラッシュM-8“Driven By Conflict”の連弾はメロデス好きにはたまらない展開のはず。
重厚かつ壮大なメロディーを丁寧に聴かせるM-9“The Frontline”、透き通るシンセが美しく響くスロウパートと荒れ狂う疾走パートを巧みに挟み込む絢爛極まりないM-10“Planet Scale”で宇宙を描き、序曲のメロディーを引用し味付けしたインストM-11“Cold”で幕を引く映画的な構成は更に磨きがかっています。
M-1とM-11を合わせることでアルバムタイトル“The Burning Cold”が出来上がる仕掛けもいいですね。
個人的には彼らの最高傑作で、自分の好きなメロデスのアルバムの中でも最上級に位置するであろう改心の一枚です。
アートワークのこだわり抜いた美しさと言い、デジパックの紙質の良さと言い、視覚や触覚の面でも文句のつけようがありませんね。素晴らしい大傑作です。


1. The Burning
2. Gods Go First
3. Refining Fire
4. Rest In Your Heart
5. Over The Battlefield
6. The Fearless Entity ★
7. Be The Sky
8. Driven By Conflict
9. The Frontline
10. Planet Scale
11. Cold
(2018/Century Media)
Time/51:17